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ブラックジャックが過労死しないために

病院はブラック企業なのか。医師の“働き方”考える
 最近、過労死問題が大きな波紋を呼んでいます。「頑張れると思っていたのに予想外に早く潰(つぶ)れてしまって自己嫌悪!」などのつぶやきが暴露され、月130時間の時間外労働と報道されています。若い生命が絶たれた痛ましい事件です。

 県立病院で勤務していた時を思い返すと、7時から23時頃まで病院にいるのが日常でした。長時間労働を気にしなかったし、残業申請もなかったと記憶しています。

 残業時間のアンケートでは、月に約200時間でした。今思うと過酷な長時間労働で、よく過労死しなかったと思います。

 しかし、辛いと思ったことはなく、早くブラックジャックのような外科医にと願っていました。4月からの赴任人事にもかかわらず、無給でもいいから働かせてくれと上司に頼み込み、7日前から病院で生活していました。

 こんなワーカーホリック的時代はもう古い時代のことなのかもしれません。

 最近のストレスチェックでは、心身のストレス反応が84点で、基準である77点をはるかに超え、私は高ストレス者でした。部署別解析をみると、高ストレス者が50%の部署もあり、病院はブラック企業なのかもしれませんね。

 年をとっても、6時から出勤し18時過ぎまで勤務し約80時間の時間外労働をして、いつまでたっても医師の労働環境は改善されていないようです。

 ワークライフバランスとは違い、ワークエンゲージメント(仕事への熱意・没頭・活力で心の健康度を示す)に重きを置き、仕事へのやらされ感が無いように労働環境改善に取り組んでいる企業があります。

 留学先で、一流の外科医になるためには、密度の高い1万時間が必要と教えられました。計算してみると、1日15時間働き(月140時間の時間外労働)約3年間で一流になれることになります。

 経営者側の視点からは「働からざるもの食うべからず」だと思いますが、時代の変化とともに、嫌なことを楽しく働いてもらうように経営者側も新しい手法を考えなければいけないのでしょう。

 医師の長時間労働はいまだに解決されてはいませんが、命を預かっている以上、単純に時間を減らす働き方だけでいいのでしょうか。

 すでに「赤ひげ的」な医師像は過去のものになっているのだとしたら、受診する患者さんや家族も受診の仕方をどうしたらいいか、議論しなければいけない時代が来ているのかもしれません。読者の皆さんはどう思いますか?
(文=東海林豊・東京さくら病院院長) 
日刊工業新聞2017年2月3日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
ドラマ「救命病棟24時」で渡辺いっけい氏演じる医局長が過労死したシーンがとても強く印象に残っている。「医者の医者の不養生」(もちろん看護師も)は社会的問題だ。

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