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爆発物を探知をせよ!1時間で1200人を大量検査できる日立の技術とは

リーマン後に開発が一時中断。国から背中押される
爆発物を探知をせよ!1時間で1200人を大量検査できる日立の技術とは

生井誠担当部長(中央)が率いる開発チーム

 世界的にテロ対策の重要性が高まる中、ウォークスルー型爆発物探知装置は爆発物の全数検査を実現する世界初の装置として注目されている。日立製作所の野尻辰夫セキュリティセンタチーフマネージャは「装置には、微粒子を一瞬で集めて分析するという日立の技術が詰まっている」と説明する。

 本人認証に使うIDカードを同装置に差し込むと、カードに付着した微粒子を収集・分析し爆発物を扱ったかどうか探知する。爆発物の微粒子を採取・濃縮し分析する時間は、1件当たり3秒以内。

 1時間で最大1200人の大量検査を可能にした。セキュリティー事業に技術を注ぎ込んできた日立だからこそ実現できたという。

 テロの手口として爆発物が増えており、爆発物の有無を全数検査することを重視した。同社の高田安章バイオシステム研究部主任研究員は「IDカードなどインターフェースに一定の条件はあるものの、確実に探知できる」と胸を張る。

 2008年のリーマン・ショック以降、事業費の削減などの理由から開発の中断を余儀なくされていた。だが警察庁や国土交通省などから開発の要望があり、文部科学省なども加わってプロジェクトに着手。約8年間開発を進めて製品化することに成功した。

 研究開発段階を経て試作機が完成した後、14年以降は大みか事業所(茨城県日立市)が本格的な製品化を担った。若手社員だったセキュリティセンタの水野弘基氏は主な設計などを担当して「(世の中に)ない物を作ることにやりがいを感じた」と話す。またテロなどによる爆破事件が起きるたびに、製品化を進めるチームの中で使命感が生まれたという。

 一方で「セキュリティー対策は複合的にする必要がある」(永野久志セキュリティセンタ主任技師)と語る。今後の開発については、他の技術と組み合わせて包括的なセキュリティーソリューションとして展開する。
(文=渡辺光太)
日刊工業新聞2017年1月31日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
ウォークスルー型爆発物探知装置は通行の流れを止めずに全数検査できるのが特徴。空港や発電所などの利用を想定するほか、人の出入りが多い駅やイベント会場などにも導入できる。 (日刊工業新聞第一産業部・渡辺光太)

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