産業界の“プロ人材”はFA宣言を

NTT社長が語る日本流「働き方改革」

NTT社長・鵜浦博夫氏「多様性が企業を強くする」


 昨秋―。スペインにあるグループ会社を訪れた私の目に飛び込んだ光景は、人影まばらなオフィス。その日は金曜日。聞けば従業員の多くは月曜日から木曜日に集中的に働くことで金曜日は午前で業務を終了し、すでに退社したという。

 2017年は日本にとって働き方改革を加速する年となるはずだ。産業構造やビジネスモデルは大きく変わろうとしている。

 企業が付加価値の高い魅力ある商品やサービスを生み出し競争力を発揮し続けるには、長時間労働を前提とした画一的・硬直的な働き方を改め、従業員のライフステージに合わせた柔軟な働き方を通じて、多様性や従業員の能力を引き出す視点が不可欠だ。

 労働力のミスマッチ解消では、非正規社員の不合理な処遇改善を進めることも必要である。

 長時間労働の是正に向けては、個別企業の取り組みだけでは抜本的な解決策につながらないケースがあるのが現実だ。

 運送業や介護分野のように、長時間労働を原因とした人手不足や取引慣行に課題がある業界の働き方を変えていくには政府の後押しも重要である。

 正社員と非正規社員の均等待遇を目指す「同一労働・同一賃金」をめぐる議論では、職務内容が同じならば同一賃金を支払うことを前提とする欧州型制度と、経験や役割を重視する日本型制度が天秤(てんびん)にかけられがちだ。だが、これからはいずれの要素も勘案した複線型の雇用・人事制度が必要と考える。

 組織に対する従業員の帰属意識の高さや中長期的視点に立った人材育成システムなど日本型の雇用制度の良さは否定されるものではなく企業競争力の源泉であり続けるだろう。

 一方で、高度プロフェッショナル人材のように時間や場所に縛られない働き方が広がる現実も直視しなければならない。

 サイバーセキュリティーの専門家にホワイトハッカーという技術者がいる。彼らはひとたび問題が発生すれば昼夜問わず対応に追われるが、事態が収束すればしっかり休むようなメリハリの利いた働き方をする。

 こうした人材は、一企業に縛っておくのではなく、産業横断的に価値を認め、プロ野球選手がフリーエージェント(FA)権を行使するような活躍の仕方も考えられるだろう。

 働き方改革とは働き手を一つの色に染めることではない。日本企業の働き方の選択肢はあまりにも狭かった。従業員の実情に合わせ、能力を最大限発揮できる環境や機会を提供することが企業を、日本経済を強くする。

日刊工業新聞2017年1月27日

明 豊

明 豊
02月01日
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トランプ大統領の移民の受け入れを停止・制限に対して米国内だけでなく世界中で波紋、反対の声が上がっている。最初に声を上げたのがIT業界。アップルのクックCEOは「移民なしでアップルは存在しなかっただろうし、繁栄もイノベーションを起こすこともできなかっただろう」と語り、フェイスブックのマークCEOも「米国は移民に対してオープンであり続けるべきだ」と投稿。ITだけでなく大手の製造業や金融業界からも反対の声があがっている。日本はこれを機に米国から高度のエンジニア、データサイエンス人材を受け入れるべき、という声もある。ただ日本型の雇用習慣にまだまだ根付く土壌ではハードルは極めて高い。ただ今回の件で人材と産業競争力を改めて考えるきっかけになったことは確か。まずはこういう人材が何人不足しているから、いつまでに何人を教育、育成、規制緩和するかという中長期の国家戦略が必要です。

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