ソニーから「デジカメ」という言葉が無くなる日

「イメージング事業と呼んでほしい」

 2012年、ソニーのデジタルカメラ事業は、それまでの拡大路線から利益重視に転換した。フルサイズの画像センサーを搭載した「α7シリーズ」が成果を見せ始めていた14年、エグゼクティブバイスプレジデントの石塚茂樹は、さらなる改革を進めた。「構造改革は十分ではない」。石塚にはまだ物足りなかった。

 設計開発のプラットフォーム化を加速するなどコストを徹底的に削減する一方、画像処理技術や画像センサーなどを通じて業務用映像機器との融合を強化した。高感度など性能を追求して高価格帯路線を軌道に乗せ、プロのカメラマンや写真愛好家も取り込んだ。

 結果、デジカメ事業は15年度の実績で10・1%の営業利益率をたたき出す優等生になった。ただ市場は縮小が続き、低迷している。これを受け15年度からの中期経営計画では、デジカメ事業は安定収益領域に位置付けられた。

 だが石塚は安定的な収益に甘んじることなく「成長へかじを切る」と宣言する。民生用カメラでは一定の収益基盤を築いた。次の焦点は業務用機器事業。ソリューションビジネスの実現が、そのカギとなる。

 映像伝送技術やネットワーク技術、クラウドを活用し、小型中継車や放送局、常設カメラ、スタジアムをつないでネットワーク化する。この映像伝送ソリューションをテレビ中継・放送分野に売り込むほか、監視や遠隔手術といった新分野への参入も狙う。

 最近、石塚には口癖がある。「デジカメ事業ではなく『イメージング事業』と呼んでほしい」。映像に関わるあらゆる領域でソニーの存在感を出す―。そんな思いが込められている。

 課題だった業務用と民生用の両事業の連携は、製品開発の分野で業務用の技術が民生用機器に応用されるなど成果が出始めた。次は実際のビジネスでも連携できるかが問われる。

 石塚は「新しい市場を作るのは我々のような会社がやる仕事だ」と言い切る。これまでは売り上げを落としながら利益を上げてきたが、さらなる業務用と民生用の融合で新市場を創出し売り上げの拡大と利益の増加の両立を目指す。
(敬称略)
             

日刊工業新聞2017年1月26日

明 豊

明 豊
01月29日
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今度こそデジカメメーカーの淘汰が始まる。ソニーの利益率も、地震の影響を除いたとしても今年度はかなり下がってきているはず。

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