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安川電機が「産業用ロボット=6軸」の常識を打ち破れた理由

車両製造ラインは日々複雑化、1台で何とか作業ができないか
安川電機が「産業用ロボット=6軸」の常識を打ち破れた理由

ロボットのモデルを使って動作確認をする(中央が岡久部長)

 「産業用ロボット=6軸」。自動車製造現場で活躍するスポット溶接ロボットは、長く6軸が常識と言われてきた。自動車メーカーはロボット各社が提供する6軸機をどれだけ効果的に製造ラインに配置し、短時間で作業するかに腐心していた。だが近年はモデル数が増え、ラインレイアウト設計にも熟練技が要求されるようになり、ロボットにも進化が求められていた。

 安川電機の「モートマン―VS100」は世界初の7軸スポット溶接ロボット。6軸機に1軸を追加することで、6軸機が苦手なロボット手前側の有効動作領域を大幅に拡大し、ワークへの接近設置や製造ラインの省スペース化を実現した。

 同社はすでに双腕ロボットで7軸化に成功しているが、そもそもスポット機に7軸の概念がなかった。軸を追加することで製品が大型化して動作領域が広がり、隣接機との干渉や作業スペース確保が必要となると考えられていたからだ。

 だが車両製造ラインは日々複雑化し、設計や製造の熟練者も高齢化が進む中でロボットに対する期待が膨らんだ。

 溶接作業を効率化するため大型機と小型機の組み合わせや、台座を使って上下位置から同時溶接するなどさまざまな工夫が凝らされる中で「1台で何とか作業ができないかという要望が寄せられた」(岡久学ロボット事業部アプリケーション技術部部長)という。

 新たに1軸を追加することで装置が大型化しては意味がない。岡久部長はロボットのアーム部、2軸目と3軸目の間(垂直回転)に同一回転方向の7番目の軸を加えた。これにより人が肘を折り畳むようなアーム屈曲動作(可動範囲=435ミリメートル―870ミリメートル)が可能になり、打点姿勢の自由度を高めた。

 また導入前のトライアンドエラー回数を減らすことで労務費削減も可能にした。岡久部長は「ラインの下をくぐる、モノをつかむなどの作業も進化したので、自動車以外の業種にも導入できる」と広がりに期待している。
(文=北九州・大神浩二)
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
「モートマン―VS100」は豊富な製品ラインアップの中では中型(高密度配置対応)に位置する。可搬質量は100キログラムとコンパクトで、省スペース・高効率・省エネを徹底追求した。軸を追加した世界初のアーム長可変構造採用で、1台で複数分の役割をこなすその使い勝手の良さは、自動車製造現場に変化をもたらすと賛辞を持って迎えられた。

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