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「北海道」と「北陸」、新幹線効果をどこまで継続できるか

経済界トップが語る2017年。「地方創生のチャンスはどこにある?#02」
「北海道」と「北陸」、新幹線効果をどこまで継続できるか

北海道新幹線(左)と北陸新幹線・金沢駅

**北海道経済連合会・高橋賢友会長
 北海道は新たな転換点を迎えた。次のステージに向けて「食」「観光」「モノづくり」を3本柱として伸ばし、新たな産業の創出などを見据えることも重要だ。課題や好機に対し道内の経済界はどう臨むのか。北海道経済連合会の高橋賢友会長に取り組みを聞いた。

 ―16年は北海道新幹線が開業しました。
 「道民の悲願だったので感慨深い。開業から半年が経過した16年度上期の時点で乗車人員は前年同期比約1・8倍となった。開業効果は観光面を中心に、駅のある木古内町など道南全域に広がっているようだ。ただ、道南地域だけでなく全道へと開業効果を波及させるには課題がある。2次交通網の整備も必要なほか、関係機関と連携し、札幌開業を一日も早く実現させるために取り組みたい」

 ―北海道経済の見通しは。
 「基調として緩やかに回復している。公共投資は前年を上回っており、個人消費も回復している。観光は15年度に外国人観光客数が200万人を突破するなど特に好調だ。一方、道内の地方会員企業を訪問すると、アベノミクスの効果は道内隅々にまで行き渡っておらず、中央と比べ力強さに欠けていると感じる。総じて考えると、17年は緩やかな持ち直し基調が続くだろう。ただ、日露経済協力のさまざまなプロジェクトや道内の空港民間委託に関わるプロセスなどが動きだす年でもある。道内経済の活性化につながることを期待する」

 ―北海道の新たな柱としてモノづくりの活性化も欠かせません。
 「道内は自動車関連企業の進出で製造品出荷額が増加した。モノづくりは強い産業構造を作る。注目は自動車関連では自動走行だ。米国で研究開発が進んでおり、道内でも走行試験や研究拠点として協力できるのではないか。大樹町がロケット射場の誘致に取り組むなど、航空宇宙産業も若者に夢を与える将来性のある産業になり得る。衛星が多く飛ばせれば、スマート農業のレベルも上がり、強みである食産業の発展につながる」

 ―食産業振興にはどう取り組みますか。
 「フード特区機構と連携し、道産食品の高付加価値化や海外需要の獲得に取り組んでいる。高付加価値化では、北海道独自の北海道食品機能性表示制度(ヘルシーDo)で、これまで71品目が認定された。イチゴ生産の大規模植物工場を苫小牧東部工業基地に設けて実証実験も進めている。東南アジアや中東イスラム諸国などへの輸出拡大も支援しており、北海道が掲げる食の輸出目標である18年までに1000億円の達成を目指す」
北海道経済連合会会長・高橋賢友氏

【記者の目/食・モノづくり連携充実に期待】
 北海道はさまざまな節目を近年迎えている。期待するのは食とモノづくりのこれまでにない連携だ。16年は台風上陸で農業が甚大な被害を受けたが、対策にモノづくりの出番もあろう。ロシアとの交流なども何かヒントになり得るか。1年で大きな変化はないかもしれないが、きっかけが生まれるか注目したい。
(文=札幌・山岸渉)

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日刊工業新聞2017年1月16/18日
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
いずれも新幹線が新規開業し、さらに延伸を控える地域。新幹線という「大動脈」が通った効果が出ているよう。これから必要なのは2次交通など血管をめぐらせ、人や金といった「栄養」の受け渡しを活発にすること。さまざまなユニーク施策が切れ目無く続くことに期待です。

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