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【連載】国産木材でギター造りはじめました。(1)―輸入材ばかりのワケ

【連載】国産木材でギター造りはじめました。(1)―輸入材ばかりのワケ

SAKUWOOD MR-15デザイン

 6月17日(水)~19日(金)、東京ビッグサイトにて「スマートコミュニティJapan 2015」が開催されます。
 18日(木)には、農林水産業と再生可能エネルギーによる地方創生フォーラム「ライブ・ドリアード2015」を開催。林芳正農林水産大臣をはじめとするパネルディスカッションと、エンターテイメントプログラムでさまざまな視点から地方創生を考えます。
 そこで登場するのが、国産木材によるエレキギター。国産木材を使用したギターはほとんどありません。そんな中なぜ、国産木材を使うのか。一般社団法人創造再生研究所の小見山將昭所長が解説します。(編集部)

■森林国の日本で、輸入木のギター
 どうして日本の森の木で造られたギターがないんだろう。
 ギターを弾く私はそんな疑問の時を長く過ごして来ました。
 最初に安価なギターを買ったのは中学2年生の時で、高校生になり腕も上がり、オリジナル曲がニッポン放送でオンエアーされ、コンサート会場が埋まるようになると、エレキやアコースティックギターは国産の良質なものに変わりました。そうすると、最初のギターは合板(ベニヤ板)の粗末なものであることが分かり、選ばれた単板の木の音色とはかなりの違いがあることを認識しました。
 しかし、日本は森林国なのに、素材の木が輸入物で占められていることに違和感も持ちました。
 木の楽器の所有者は、何気なく樹種や産地や特徴を覚えていくものです。
 やがて、アメリカのギブソンやフェンダーやマーチンといったミュージシャンなら誰でも憧れるギターを手にするようになる頃には、音楽業界でレコーディング・プロデューサーになっていました。

 プロが使う楽器の木の殆どは、アメリカ、カナダ、ヨーロッパなどの、楓(メイプル)、トウヒ(スプルース/マツ科)、トネリコ(ホワイトアッシュ)や、マホガニー(桃花心木)で、木材の種類によって固めの強い音だったり、ソフトで深みのある音だったりします。
 ちなみに私が好きな木は、心材が赤みがかり軽量なマホガニーで、この材を使ったギブソンのSGモデルのエレキギターを好んで使ってます。中南米産の通称ホンジュラス・マホガニーは現在ワシントン条約に登録され輸出入には生産者証明が必要です。乾燥による狂いも少なく耐久性があり、美しい木肌をしているので、高級家具や高級楽器、キャビンの内装に使われて来ました。最高級銘木のキューバン・マホガニーは入手が困難で、樹木の生態はベールに包まれています。

■楽器のために保護された森
 木製楽器の最高峰といえばヴァイオリンのストラディヴァリウスですね。主にジャーマン・スプルース(ドイツトウヒ)やトネリコで製造され、植林された森の木は使っていません。アントニオ・ストラディヴァリが木材を仕入れていたイタリアのパナヴェッジョの森は、マホガニーのようにギャングの資金源の為に違法伐採されたのと違い、楽器に使われるからこそ永く保護されて来た森なんです。
 『森の中からジャズが聴こえる』の著者リンダ・マンザーさんは、カナダの森で生きるギター職人です。彼女の造ったギターはジャズ・ギタリストのパット・メセニーが愛用していることでも有名ですが、木製楽器は地球の財産である『森の声』を形に変えるという思想があるんです。
 『森の声』とはなんでしょうか?それは樹木・植物により生態系が育まれ、貴重な水をつくりだす
生命の産声のようなものかも知れません。

 私は、創造再生研究所を発足させ、生物多様性や森林、農業と食などの研究に携わるようになって、いよいよ冒頭の疑問がピークに達してしまいました。
 そこで、今回は日本産の木材を使ったエレキギターのデザインを私自らが起し、ギター造りの匠である松井正博さん(MATSUIギター工房)に製造を依頼しました。
 その過程と完成披露をニュースイッチに掲載しますので、お楽しみにしてください。


 【略歴】こみやま・まさあき 音楽・映像プロデューサー&ミュージシャンを経て、東京都都市緑化イベント、地域活性化イベント及び農林水産省広報企画等に立案参加。シンポジウムライブ「ライブ・ドリアード」主宰。オーガニックライフ提案ブランドSAKUWOOD代表。
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
「スマートコミュニティJapan2015」に向けての特別連載です。同展示会内では、ニュースイッチもスペシャルセッションを開催予定です!

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