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定期的に訪問診療へ行くだけでは孤独死は減らない

「内面世界」に踏み込み課題に向き合う
 在宅医療とは、高齢に伴い介護が必要だが通院困難となった患者さんに対し、医師、訪問看護師、薬剤師や理学療法士(リハビリ)らの医療関係者が、患者さんのお住まいに定期的に訪問して、計画的で継続的な診療を行うことです。

 高齢者には、認知症、脳卒中、がんなどで、昨日まで自立されていた方が、突然介護を必要とする状況を想定しなくてはなりません。

 その際、高齢な患者さんにとって重要なことは、自分で意思決定ができなくなった時に備えて、本人が語ったことや書き残したものから本人の意思が尊重され、家族や医療スタッフが、本人にとって最善の医療を選択し、全体的な目標を明確にしたケアを提供することです。

 難しい話しをしますと、こうしたことの実践のためには、「社会的包摂」「統合」「内面世界」が重要と言われております。

 「社会的包摂」とは、次のような概念です。例えば、近年首都圏では、高齢者の孤独死や認知症患者の行方不明や事故死が増加しています。それらの不幸をなくすため、高齢者医療においては対象別、制度別といった縦割りを克服し、領域を横断した包括的・予防的支援が必要となります。

 また、当事者が自ら声をあげることができないケースでは、支援側から働きかける「アウトリーチ」で我々の方から訪問していく手法もあります。こうして社会的弱者を包み込んでいくことが重要です。

 さらに、問題解決を迅速化するため、窓口を集約したワンストップ型の体制整備や、医療介護関係者の他職種連携および、病院、クリニック、老人施設などの業務連携を地域ごとに密にする「統合」が必要です。

 そして、高齢者の「内面世界」に踏み込み、いつかは訪れる命の終わりについて考える人に、最期までその人らしく生きることができ、希望をかなえてあげる医療や介護ケアを提供すべきであります。

 単に定期的に訪問診療を行うだけではなく、体のつらさ、気持ちのつらさ、家族に迷惑をかけたくないと考える時、金銭的に困った時、生活や医療における大切な選択をする時など、いろいろなつらさに対し関わり、命や生活の質を高めることが在宅医療です。
(文=金谷幸一・南町田病院副院長)

日刊工業新聞2016年6月17日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
人は一人では生きていけないが、死ぬ時はやはり一人だと考えてしまう。「孤独死」の定義もなかなか難しい。死ぬ瞬間、あるいは介護を受けている間とかだけが孤独を感じるわけではない。あえて孤独を選ぶ人もいる。

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