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日本電産・永守会長「残業代が減っても年収は下がらない」

「半導体は次の成長には絶対必要だがルネサスに絞っているわけではない」
**日本電産・永守重信会長兼社長インタビュー
 ―2020年に残業をゼロとする働き方改革が大きな反響を呼んでいます。
 「海外企業の買収を続ける中で、日本の働き方に疑問を持つようになった。世界企業と戦うためには、無駄を減らして生産性を上げないといけない。そこで(生産性の向上に対し)今後4年間で約1000億円投資する。その半分を、本社の間接部門や開発部門の効率化に充てる。社員はこれまでの残業時間を英語学習などに使ってほしい。残業代が減った分はボーナスなどで社員に還元するので、年収が下がるわけではない」

 ―今後の経営環境をどう見ていますか。
 「自動車業界では電気自動車(EV)や自動運転などの技術革新が起きている。EVは1台当たりのモーターの積載数量が(ガソリン車に比べて)2倍以上だ。白物家電も人工知能(AI)化が進み、搭載数量が増えている。また風力発電では(製品の)中・大型化が進む。ただ17年は欧州で相次いで選挙があり、経済界も政治の影響を相当受ける。アップダウンがきつい年になるだろう」

 ―M&A(合併・買収)戦略の状況は。
 「16年に買収した米エマソン・エレクトリックの発電機事業は、当社が持つ蓄電装置と組み合わせることで、トータルなシステムを構築できる。モーターメーカーから電装メーカーに変わり、さらにシステムメーカーに変わる。通信やソフトウエアの人材を強化し、いずれは半導体メーカーも買わないといけない」

 ―ルネサスエレクトロニクスを買収する意欲は今もありますか。
 「ギブアップしたわけではないが、ルネサスに絞っているわけではない。半導体メーカーは世界にたくさんある。今すぐ必要というわけではない。まずは売上高2兆円にする。半導体はその次の成長には絶対必要だ」

 ―けいはんな学研都市で生産技術研究所の建設が始まりました。
 「当初の建設計画に100億円を追加し、2棟建設する。1000人規模の研究所で、グローバルなモノづくりの中心地になる。また中小企業とのオープンイノベーションの拠点にもする。今後は技術を補完し合うため、中小企業や大学と関係を強化する」

 ―「30年度に売上高10兆円」という目標は、永守会長自身も“大ボラ”としていますが。
 「(10兆円に)いくと思う。そういう時代に来た。売上高2兆円になると、1兆円以上の企業が買える。そのために大切なのは人材。外部からの取り入れもあるが、基本は自分のところで育成する。米国では技術者が夜間の大学院に通ってMBAを取得し、経営者になる。日本もそれをやらないといけない」
(聞き手=京都・園尾雅之)
日刊工業新聞2017年1月18日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
3月、本社向かいに新ビルが完成する。グローバル経営大学校の校舎で、社員教育の要となるものだ。その時間に充てるためにも「残業ゼロ」は必須。ハードワーキングで知られた永守会長だが、口にしたのは人材育成のことばかり。「時代は変わった」と言い切る。ただシステムメーカーを見据える同社だけに、仕事の中身への要求は今まで以上に高まりそうだ。 (日刊工業新聞京都支局・園尾雅之)

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