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タカタ、米司法省と和解。債務は1兆円超えるもスポンサー選定の節目に

残るテールリスクは、集団訴訟費用とデシカント付き硝酸アンモニウムインフレーター
 タカタは米司法省とエアバッグの異常破裂問題に関して刑事責任を認め、罰金や補償金など10億ドル(約1150億円)を払うことで合意した。連邦大陪審は同社の元幹部3人を詐欺罪で起訴した。刑事案件が一つの区切りを迎え、タカタは経営再建に向けスポンサーの選定を本格化する。ただタカタ幹部は再建の行方はスポンサーとの交渉次第とし、「2016年度内にまとまるかは分からない」と先行きは不透明だ。

 「こうした状況に至ったことを深く後悔している」。司法省との合意を受け、タカタは高田重久会長のコメントを発表し、改めて陳謝した。同社は自動車メーカーに提供した試験データや報告の不備で通信詐欺の罪を認め、罰金2500万ドルを支払うことで合意。被害者や車メーカーの補償基金を設立するため、それぞれ1億2500万ドル、8億5000万ドルも拠出する。

 司法省によるとタカタは00年前後からエアバッグを膨らませるインフレーターの一部が車メーカーの仕様を満たしていないことなどを把握。しかし試験中の破裂事例を除くなど車メーカーへの情報提供や報告に不備があったという。同省幹部は13日に発表した声明でタカタは10年以上にわたり重要な試験データを改ざんし「安全性よりも利益を優先していた」と非難した。

 「スポンサー選定においても重要な節目になる」。一方、高田会長は声明でこの合意が経営再建に向け重要な一歩になるとの認識も示した。同社は現在、弁護士らで構成する外部専門家委員会を設置し、スポンサーの選定を含め車メーカーとのリコール費用問題の解決に取り組む。

 リコールは世界で1億個超に広がり、費用は1兆円規模に膨らむとの試算もある。リコール責任は明確になっていないが、仮に車メーカーから一斉に費用を請求されれば、タカタは債務超過に陥る可能性が高い。車メーカーは事業の継続性を、スポンサーは債務の確定を望むとされる。

 タカタ幹部は13日、再建手法について「私的整理が一番良いと思っているが、そうなるかは別の話」とし、法的整理の可能性を含めスポンサーとの交渉が進むとの見方を示した。また再建策がまとまる時期についてはスポンサー選定後に明確になるとし、「16年度内にまとまるかも含めどうなるか分からない」と述べた。司法省との合意は再建への重要な節目となったが、車メーカーを含めた調整は難航も予想され、交渉の行方は見えていない。
(文=西沢亮)

日刊工業新聞2017年1月16日
中西孝樹
中西孝樹 Nakanishi Takaki ナカニシ自動車産業リサーチ 代表
米国司法省との和解で刑事罰に目途がついたことは、現在進めらているスポンサー選定に大きな影響を与えるだろう。残るテールリスクは、集団訴訟費用とデシカント付きの硝酸アンモニウムインフレーターの2つに絞られる。債務は記事にある1兆円では収まらない公算が高いだろうが、タカタ、自動車メーカー、スポンサー、役所が力を合し、ドライバーの安全を担保できる解決策を見出すことは可能と見る。

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