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就任したばかりの昭和電工社長。交代は良いタイミングと宣言するワケ

森川宏平社長インタビュー「(トランプ政策は)逆風ではないだろう」
就任したばかりの昭和電工社長。交代は良いタイミングと宣言するワケ

森川宏平氏

 ―トランプ米大統領の誕生をはじめ、2017年の世界経済は不確定要素が多いです。
 「瞬間的に何が起こるか分からない。ただ、長い目で見れば、それほど悪くないと感じている。米国ではいろいろな事業を展開しているが、(トランプ米大統領の政策は)逆風ではないだろう。こちらとしては自然体でやっていくしかない。短期的な判断ではなく、長期で考えるのがより重要になる」

 ―17年12月期のハードディスク(HD)事業の見通しは。
 「16年のコストダウン施策の効果が出るし、市場が想定ほど落ちない。データセンター向けが伸びてきており、ドライブの数以上にディスクの数が増えるのでありがたい。コストダウンについても、収率向上や時間当たりの生産量を増やすなど少しの改善で大きな成果につながっていく」

 ―もう一つの柱である電炉用黒鉛電極事業では独SGLカーボンから事業を年央に買収します。
 「ただでさえ足の長い事業なので、統合を素早く完了して結果も速く出す。今回の統合によりアジア、米国、欧州を市場として見られる電極メーカーは当社だけになった。(世界首位の立場になってさらなる業界再編について)当然そういう見方をしていきたいし、すべきだ」

 ―リチウムイオン二次電池部材事業は電気自動車の普及で追い風が吹いています。
 「売り上げが200億円規模に近づき、黒字化もできた。一人前に育った。高機能に特化し、それほど競合他社がいない。伸ばしていける事業だ」

 ―17年の設備投資計画は。
 「新規投資としてはアルミ缶のベトナム再増強、パワー半導体の能力増強、電池材料の増設などがある。16―18年の設備投資計画(累計1300億円)を立てているが、18年の一部案件を17年に前倒しする」

 ―4日に社長に就任したばかりです。
 「結果的に良いタイミングでバトンタッチしてもらった。HDなど変動の大きい事業は変動を良い方向に導く道筋ができた状態で就任した。17年はやりがいのある時期だ」
(聞き手=鈴木岳志)
日刊工業新聞2017年1月13日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
“鉄冷え”により市場環境の厳しい黒鉛電極事業で独社買収という攻めの一手を打った。市場のプレーヤーを減らすとともに、規模のメリットを享受する狙いだ。早期の統合効果発揮で「無謀な買収」という社外の否定的な評価を覆したいところだ。重責を担う新社長には垂直立ち上げが期待される。 (日刊工業新聞第ニ産業部・鈴木岳志)

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