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意外と伝わっていない「抗がん剤治療」の選択肢

患者自身が生活や人生観から選ぶことができる
 皆さんは抗がん剤という言葉にどのようなイメージを抱いているでしょうか?「がんを治す薬」「使うと髪の毛が抜けてしまう」「抗がん剤治療は入院が長くなる」など思いつくでしょうが、そのイメージは正しい側面もあり、誤った側面もあります。今回は抗がん剤についてお話します。

 抗がん剤は、がん細胞に働きかけ細胞の増殖を抑えることを目的とした薬剤です。がんの種類によっては、例えば白血病や悪性リンパ腫は、抗がん剤が治療の第一選択となり、がん細胞を死滅させ完治を目指します。

 一方、消化器の進行がんなど、リンパ節ヘの転移があったり、隣接する臓器に浸潤している場合には、がんやリンパ節のサイズを縮小させ、手術で完全に取り除くことを目的に使ったり、がんの手術治療後に再発や転移を抑制する目的に使ったりします。

 つまり、すべての抗がん剤が必ずしも、がんの完治だけを目的として使われるわけではないのです。

 抗がん剤治療を行う上で、気をつけなくてはならないことは副作用です。抗がん剤は、がん細胞に効くと同時に、正常な細胞にも作用を及ぼします。特に細胞増殖の活発な毛根細胞に作用すると脱毛が現れ、骨髄に作用すると貧血に現れ、消化管の細胞へなら吐き気や下痢といった症状が現れることになります。

 抗がん剤の種類によって発生する副作用の種類も異なりますし、また症状の強さも個人差があります。

 現在、抗がん剤治療にはさまざまな方法があります。入院して行う方法。そして、仕事、家事など社会生活を維持しながら、経口抗がん剤を規則正しく内服する方法や、2―3日分の液体の抗がん剤を特殊な容器に入れ点滴の管と連結し、患者は点滴の針を入れたまま自宅に戻り、治療を行う方法など、最近は入院せずにできる治療法が増えてきています。

 近年、患者さん自身が生活や人生観から選ぶことのできる選択肢も増えています。病院によって、あるいは医師個人によっても提案する抗がん剤治療には差が出てきます。

 皆さん自身、あるいは身近な人が抗がん剤治療に関わる状況になった時には、できるだけ数多く検討し、身体的状況、社会的状況に合わせた納得できる治療法を選ぶことをお勧めします。そのためには1人の医師のみに話しを聞くだけでなく、セカンドオピニオンも有効です。
(文=高橋建・平成立石病院医師)
日刊工業新聞2016年3月25日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
先日、海老蔵氏のドキュメンタリーの中で小林麻央さんの闘病も描かれた。もちろん治療法や治療薬の進歩もあるが、家族の支えと患者自身の気持ちのもちようがいかに重要であるかを改めて感じだ次第です。

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