「国家を背負うトヨタはスケープゴートにされやすい」

米経済への貢献に理解を求める姿勢打ちす

 トヨタ自動車が米国で再び試練に見舞われている。米自動車メーカーのメキシコ投資計画に対して批判を繰り広げてきたトランプ次期大統領が、その矛先を向けた最初の日本企業がトヨタだった。トヨタは米国でこれまで日米貿易摩擦や大規模リコール問題など幾度の試練を経験してきた。「日本企業代表」のトヨタは標的にされやすい立場にあるのは事実。トヨタは今後の投資計画を明らかにするなど米国経済への貢献に対し理解を求める。

 「トヨタとしては米国はこれまでも重要で、これからも重要となる。企業市民としてこれからもしっかりやっていく」。10日、トヨタの伊地知隆彦副社長は名古屋市内で記者団に対し、こう語った。

9日には米デトロイトで開幕した北米国際自動車ショーで豊田章男社長が今後5年間に米国で100億ドル(約1兆1500億円)を投じる計画を表明した。あわせて、これまでの60年間に米国で220億ドル(約2兆5300億円)を投資してきた実績や米国で13万6000人を雇用していることも強調した。

 トヨタにとって米国を中心とする北米市場は、世界販売の約3割を占める、とりわけ重要な市場だ。今回、北米自動車ショーで豊田社長が登壇したのも、投資計画を含む発言内容もトランプ氏の発言前から決めていたことだが、こうした事態になることも視野にトランプ氏に対し、トヨタの米経済への貢献に理解を求める姿勢を打ち出すことにしていたというわけだ。

 「トヨタはスケープゴートにされやすい。それが怖い」。トヨタ首脳はトランプ氏の批判以前から、こう危惧の念を抱いていた。近年での、その象徴的な出来事が2009−10年の大規模リコール問題だった。車両に欠陥がなかったにもかかわらず「トヨタバッシング」は広がり、豊田社長が公聴会に呼ばれ厳しい批判も浴びた。そして今回のトランプ氏による批判。

 今や「国家を背負っている」(トヨタ首脳)とも言える立場となったトヨタには、こうした国際的な政治リスクが常につきまとってしまう。ただ理解を求めるとはいえ「業界で足並みをそろえてというのがトヨタ」(同)だけに、いち早くトランプ氏との会談を実現したソフトバンクグループの孫正義社長のような動きはできない。

 政治リスクと、どうつきあい、折り合いをつけていくかがトヨタの経営上、より重要な問題となっている。 
(文=名古屋・伊藤研二)

日刊工業新聞2017年1月11日「深層断面」から抜粋

明 豊

明 豊
01月11日
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投資の数字自体は過去の5年間とほとんど変わっていない。このタイミングで表明できた意義は大きい。トランプは自国メーカーも攻撃しているので、彼の思考は分かりやすい。今後もビジネスライクにうまく付き合っていくしかないだろう。

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