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経営者たちが新成人に薦めるこの一冊

**『中国古典 「一日一話」―世界が学んだ人生の“参考書”―』(守屋洋著)
●損保ジャパン日本興亜・西沢敬二社長

 人間関係の悩みや将来への不安を感じた時だけでなく、新たな挑戦をしたい時にどう考え、行動すべきかを判断するヒントを得られる実用的な本である。

 例えば「千歳を観んと欲すれば、則ち今日を審かにせよ」という荀子の言葉がある。将来について考える場合、遠い先の未来だけを見て悩むのではなく、今のことを明確に知ることが大切だという教えを説いている。

 高い志を持つほど、人生の目標に向かって悩むことは多い。だが、そんな時こそ今目の前にある問題に真剣に向き合うことで、将来の展望がつかめてくる。私自身は常にこの姿勢で仕事と向き合っている。

『上司の心理学』(衛藤信之著)


●東燃ゼネラル石油・武藤潤社長

 カウンセラーである著者が、その知識や経験からコミュニケーションの本質を説いている。大切なのは相手の話を聞く能力であるとの指摘が、大きな示唆を与えてくれた。

 思うに上司の指示が一方的だと、部下の自発性を引き出すのは難しい。指示の背景にあるものを理解してもらい、相手の意見にも耳を傾けた上で賛同を得ることが、仕事のやりがいや成果を生む。

 このようなコミュニケーション術は家族や友人、恋人との間でも重要だ。成人ともなれば、人付き合いの幅が広がるだろう。この機にコミュニケーションの大切さを、あらためて考えるきっかけにしてもらいたい。

『武田軍記』(小林計一郎著)


●大陽日酸・市原裕史郎社長

 歴史モノの中でも、特に好きな武田信玄の物語だ。著者の小林計一郎さんが歴史学者ということもあり、作中にはさまざまな角度から調べ上げられた大小の史実が見事に織り交ぜられている。信玄が下した数々の決断にはどんな背景があり、それがどのように行動に生かされたのかを追体験できる一冊だ。

 社員には今より一段上の立場にいると想定し、より広い視野で物事を考えるよう求めている。その上で、とにかく自分の意見を持つことが大事。信玄は戦より、謀略などあらゆる手を駆使し領地を広げたと言われる。こうした信玄の判断を読み解き、報告・連絡・相談に生かしてほしい。

『海賊とよばれた男』(百田尚樹著)


●アレックス・辻野晃一郎社長

 出光興産創業者の出光佐三氏をモデルとした小説。主人公・国岡鐡造の信念と企業の大いなる成長を描いた作品になっている。自分を信じる勇気を感じられる一冊だ。

 50年以上前の終戦直後の世界が舞台だが、一寸先が見えない時こそ自分の努力と信念が道を教えてくれるのは、いつの時代も同じはず。

 むしろ多くの情報が飛び交う現代こそ自分自身で疑問を持ち、考え、答えを出す忍耐力を養ってほしい。

 新成人には失敗を恐れず、どんどん挑戦してほしい。石橋をたたいて渡るのではなく、崩れる石橋を渡りながら次の石橋を探す“考動力”が求められる。

日刊工業新聞2017年1月9日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
昨日、たまたまウォンテッドリーの仲さんが高校生向けに話す講演を聞きました。若い時にできるだけ「空間」を広げよて自分なりの美学を持つことがとても大切だと。読書は「過去」と「未来」をつないで時間を広げる。旅は空間を広げると。

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