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時価総額上位200社の86社が統合報告書を発行

CSR報告書の継続は44%
時価総額上位200社の86社が統合報告書を発行

味の素、オリックスの統合報告書より

 クレアン(東京都港区、薗田綾子社長)によると、2016年は時価総額上位200社のうち86社が統合報告書を発行した。環境・社会性・企業統治(ESG)投資の拡大に備える企業の増加を背景に、11年から8・6倍増えた。また、統合報告書を発行しながらCSR(企業の社会的責任)報告書も発行する割合が前年比6ポイント増え、44%(38社)となった。統合報告書にはCSR情報も含まれるが、読者層の違いを考慮し、CSR報告書を残しているようだ。

 統合報告書は社会や環境の課題解決と事業を結びつけ、社会に提供する企業価値を伝える。売上高などの財務情報と区別し、非財務情報と呼ばれる。

 クレアンの伊藤雅和氏が、11月16日時点の時価総額を基準に統合報告書の発行企業を調べた。発行数は14年から倍増しており、この2年で発行が加速した。

 成長を継続できる企業かどうかを知るためにESG情報を参考にする投資が増えつつあり、長期の成長戦略を伝えたい企業が統合報告書を発行するようになった。

 統合報告書はCSRや環境の各報告書をまとめた内容なので、他の報告書の発行が減ると予想されていた。しかし、16年はオリックスや味の素、積水化学工業凸版印刷など10社が初めて統合報告書を発行し、CSR報告書も継続した。

 統合報告書は投資家を意識して編集するため、他のステークホルダー(利害関係者)には情報不足となっているようだ。CSR報告書を継続する理由として、伊藤氏は「幅広い情報提供で説明責任を果たそうとしている」と分析する。
               
日刊工業新聞2016年12月28日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
統合報告書の発行は、CSR報告書からの移行(CSR報告書との集約)が前提と思っていたので、意外でした。社会性を評価する国際調査機関もあるので、CSR情報もきめ細かく公表したい企業も多いです。昨年、拝読した中では、アサヒグループホールディングスの統合報告書が読みやすく、リスクと機会、企業価値、業績が整理されていたと思いました。伊藤さんには武田薬品やオムロンの事例を紹介していただきました。

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