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懸案山積の三菱重工、それでも成長への手綱は緩めない

宮永俊一社長インタビュー「M&Aももう少しやらないと」
懸案山積の三菱重工、それでも成長への手綱は緩めない

宮永社長

 ―四つのドメインで構成する事業ポートフォリオを三つに再編します。その狙いは。
 「再編は4月に実施する計画だ。造船事業は今後も構造改革が続く。造船はたくさんの事業再編を行ってきた機械設備部門に移管して改革を進める。発電プラントなどエネルギー部門は、米ゼネラル・エレクトリック(GE)や独シーメンスなど世界の巨人との戦いとなる。こうした部門と、構造改革が必要な部門を大きく分けた」

 ―開発中の国産小型ジェット旅客機「MRJ」の納期遅延が取り沙汰されています。
 「納期延期はまだ決まったわけではない。ただ、納期をかなり精査していることは事実だ。(商業運航に必要な)型式証明を取得するプロセスなどを詳細にチェックしている。1月中には検討結果を公表したい。いずれにせよ、安全で高品質な飛行機を市場に届けるのが一番重要だ」

 ―経営再建中の仏原子力大手アレバへの出資を決めた理由は。
 「アレバとは燃料事業などで協業してきたし、核燃料サイクルでも多様な技術を持つ。原子力は総合的な技術力が求められる。この中でアレバは世界最先端の技術を持っている。親密な関係になればいろいろできるので出資を決めた。収益性など財務的にも出資は問題ないと考える」

 ―廃炉が決まった高速増殖原型炉「もんじゅ」に代わる次世代高速炉開発の考え方は。
 「当社はもんじゅは設計にも携わってきたし、高速炉を設計する子会社も持っている。当社の次世代事業として人材育成にも一生懸命取り組んでいる。アストリッドにも参画して、次世代高速炉で世界をリードできるよう技術を高めていく」

 ―日立製作所と統合した火力発電装置事業を手がける三菱日立パワーシステムズ(MHPS)の状況は。
 「ポスト・マージャー・インテグレーション(PMI、買収後のシナジーを最大化するプロセス)を本格化していく。ボイラや石炭ガス化複合発電(IGCC)設備での融合はほとんど終わった。今後はガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)の次世代ガスタービンで、GEなどとの戦いが激しくなる」
(聞き手=長塚崇寛)
日刊工業新聞2017年1月5日
長塚崇寛
長塚崇寛 Nagatsuka Takahiro 編集局ニュースセンター デスク
客船やMRJなど懸案事項が山積する三菱重工。宮永社長は相次ぐM&A(合併・買収)や事業再編などで改革の大なたを振るってきた。来期もドメインのさらなる再編に踏み込み、成長への手綱は緩めない。「M&Aももう少しやらないと」と宮永社長。構造改革と成長投資の両輪で世界の巨人に対峙(たいじ)していく。

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