製造業IoT、ウサギの欧米をカメの日本が追い越すチャンスはあるか

「ヒト+データ」科学的・持続的・再現性のあるモノづくりで歩みを早める

 IoT(モノのインターネット)活用の巧拙が、製造業の競争力に直結する時代に突入した。日本のモノづくりが進化するために「つながる」という新たな技術で、競争力の源泉である現場力を高める取り組みが始まっている。

 トヨタ自動車、日立製作所など大手製造業約70社が参加するインダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)。日本の製造業の強みを生かしたIoTを実現するため、約25件の実証事業を進めている。

 実証の特徴は「現場の人を主役としたIoT」(西岡靖之理事長=法政大学教授)。機械やITの技術進化に主眼を置く米ゼネラル・エレクトリック(GE)や独シーメンスとの違いを打ち出す。

 これまで日本メーカーは、生産ラインでの地道なカイゼン活動などを通じ競争力を磨いてきた。IoTでその強みをどう伸ばすかは、日本企業が突き詰めるべきテーマ。これを先導するのが自らメーカー機能も持つ電機メーカー各社だ。

 日立はIoTプラットフォーム(基盤)「ルマーダ」向け産業用アプリケーションを2018年度までに100種類開発し、IoTビジネスを拡大する。そのベースとなるのが自社での活用事例だ。

 大みか事業所(茨城県日立市)ではIoTを用いた改善活動で、多品種少量生産を行う制御装置の主力品でリードタイムを半減させた。カメラを用いて現場作業者の無駄な動きなどをあぶり出し、改善した。デジタル化によって、世界の工場の生産レベルが底上げされれば「その先は現場力の勝負になる」と小島啓二執行役専務はみる。

 東芝は製造業向けIoTサービス「次世代ものづくりソリューションマイスターシリーズ」の展開を始めた。装置へのセンサー設置といった現場作業からデータ分析のクラウド構築まで一括対応する。

 「マルチデバイス接続」と呼ぶ技術を使い、生産ラインの設備を入れ替えても、煩雑なプログラムを組まずに、パソコン上の簡単な操作でIoTシステムを更新できる。「データ分析、それを基にした工程改善などを現場でできるようにした」(中村公弘IoT技師長)。

 IoTによって、工場と工場、機械と機械、人と機械などがつながり、全体を俯瞰(ふかん)した改善できるようになれば「まだ改善の余地は大きい」と中村技師長はみる。「GE、シーメンスは一歩先を行く先生」(日本の電機メーカー幹部)だが、勝負は始まったばかり。つながる力で現場を進化させられれば、今後も日本の製造業は存在感を発揮できる。
(文=後藤信之、平岡乾)

ファシリテーター・八子知礼氏


 欧米と日本の取り組みの差は、ウサギとカメに例えるとわかりやすい。欧米は技術革新が進んだこの数年の成果をもってしてMBSE(Model Based System Engineering:3D-CADによるモデリングで設計のみならず部品のパラメータや評価数値も入れてシステマチックにシミュレーションしながらものづくりをおこなく手法)をはじめ、工程の数値による管理と"スマホ化(様々な便利な現場活用アプリの提供)" によってウサギのように大きく跳ねて先を行った。

 日本はヒト中心の地道なカイゼンを積み上げて行く手法で、コンピュータシミュレーションなどに頼らない現場ノウハウで欧米に負けない真似のできない品質とエラー率のものづくりをしてきたわけだ。しかしさすがにシミュレーションなどによって飛躍的なスピードで追いつき追い越しはじめた欧米の取り組みの背中を見ることも多くなったのが近年。カメの歩みならではだ。

日刊工業新聞2017年1月5日

八子 知礼

八子 知礼
01月06日
この記事のファシリテーター

 良いところは取り入れ、ヒト+データの科学的・持続的・再現性のあるものづくりを目指すことで、本文中にある通りまだまだ伸びしろがあるだろう。童話ではカメは最終的にウサギを追い越した。ビジネスでは終わりはない。継続的に良いものを取り込んで歩き続けるだけだ。唯一変えることがあるならば、カメも歩みを早めなければならないということか。

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