大手化学各社、「有望市場メキシコ」の投資に惑う

トランプ政策を注視

 総合化学各社はメキシコ事業への新規投資に慎重な姿勢を強めている。自動車産業の集積に伴い今後拡大する樹脂需要などをにらみ、ここ数年拠点整備を進めてきた。ただ、米国のトランプ次期大統領が打ち出す通商政策次第でその青写真が崩れる可能性が出てきた。有望市場の先行きに不透明感が漂い始めた。

 三井化学はメキシコ・アグアスカリエンテス州に自動車向けの樹脂コンパウンド(混練)工場を持ち、来夏に向けて製造設備を増強中だ。淡輪敏社長は「供給責任があるので当社だけ供給を抑えることはできない」と当初計画を続行する。ただ、「その後は自動車メーカーの動向に合わせて動いていく」と新規投資には慎重だ。

 2019年以降に樹脂混練工場の新設を検討してきた旭化成は、「当面は生産委託で様子を見る」(小林友二副社長)と軌道修正。15年9月に同国ケレタロ州に営業拠点を開設し、顧客開拓に励んでいるところだった。

 住友化学も16年10月からグアダラハラの販売拠点で営業を始めたばかり。十倉雅和社長は「生産委託して売ろうとしているが、幸か不幸かコンパウンドの自分の基地はまだ持っていない」と安堵する。各社は当面、必要に応じて米国工場を増強しながらメキシコへ輸出する体制を維持すると見られる。

 当然ながら、トランプ米次期大統領による急激な現状変更について懐疑的な見方は化学業界でも少なくない。三井化学の淡輪社長は「メキシコの自動車生産は米ビッグスリーが全体の45%を占めている。それを閉め出す話は自らの首を絞めることになりかねない。急な手は打ちづらいはず」と事態を予想する。

 一方で、昭和電工の電炉用黒鉛電極事業は「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」が追い風となりそう。他国製品の輸入関税が引き上げられて米国製造業が地産地消へ傾けば、電炉メーカー、そしてサプライヤーの商機は膨らむ。森川宏平次期社長は「良い方向へ行くことを期待している」と語る。もともと米国の鉄鋼産業は電炉比率が他国と比べて高いという。

 「大手で米国内に黒鉛電極工場を持つのは当社と、(17年央に電極事業を買収する)独SGLカーボンだけだ」(森川次期社長)と“独り勝ち”も夢物語ではない。
(文=鈴木岳志)

日刊工業新聞2016年12月29日

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トランプ米次期大統領の就任式は17年1月20日だ。そして、就任後100日間の行動計画も公表済みであり、来春までが一つの試金石となりそう。日本の化学業界も固唾(かたず)をのんで見守っている。
(日刊工業新聞第二産業部・鈴木岳志)

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