【突破せよ日立#05】「レッツ・ルマーダ!」で乾杯

東原敏昭社長インタビュー「常にルマーダを描きながら改革を進める」

 -2016年度は〝東原改革〟の本格スタートの年となりました。手応えは。
 「15年度に営業利益率6%超は出せるようになった。ただ細かくみれば、不採算事業はまだ残っている。日立は組織全体の透明性が低く、現場と経営層が遠いことが問題だった。この解消も狙いに4月に組織再編を実施した」

 「新体制では全部で14のビジネスユニット(BU)を構えるなど組織を細分化したことで、現場情報がトップまでタイムリーに上がるようになった。今は迅速に対策を打てる。着実に改革が進んでいる」
 
 -16年5月にはIoT(モノのインターネット)ビジネスのカギとなるプラットフォーム「ルマーダ」を導入しました。
 「予想以上のスピードで顧客に浸透し、いろいろなユースケース(利用事例)が出てきている。(ITとインフラ技術で顧客課題の解決を図る)社会イノベーション事業拡大のカギは『協創』と『コネクト(つながる)』」

 「その具体的なツールとなるのがルマーダだ。例えば産業・流通ではeコマース(電子商取引)決済から工場での生産、物流までつながったソリューションが必要になり、そのためにルマーダが役立つ。また日立1社では幅広い課題を解決するのは難しい。ルマーダは顧客や事業パートナーとの協創のためのプラットフォームでもある」
 
 -協創という部分では顧客に対するコンサル力が重要です。
 「リーダー役のとんがった人材が必要で世界中で募っている。一方で(顧客と接する)フロント人材のすべてをとがった人材でカバーすることは難しい」

 「そこでITツールなどを使って顧客課題を明確化するための方法論を体系化した。これを供用すれば、新しい人でもフロントに出られる。人材、方法論の両面でフロント強化の取り組みは加速している」
 
 -技術や製品、各フロントBUをつなぐプロディーサー不足が課題です。
 「横のつながり強化も狙いに、社内の業務効率化にルマーダを使うよう各BUに指示している。あるBUのユースケースをほかのBUが参考にする形にして連携を促したい」

 「世の中で一般的にはチーフ・デジタル・オフィサー(CDO)だろうが、当社では各BUでチーフ・ルマーダ・オフィサーを任命する。そして社内での実績を基に、顧客に提案する流れをつくる。常にルマーダを描きながら改革を進める」
 
 -今後のグループ再編は。
 「常に時代に応じた事業ポートフォリオを検討する。ルマーダにつながって価値が上がる事業は近づける。またビッグデータ(大量データ)や人工知能(AI)を活用し伸びる事業はもっと投資する」

 「そうではなく単独でやったほうが良い事業は、常に組み替えていく。ただ何でもかんでも買い込んで、資産を大きくすることはしない。投資効率をみて、きちんとお金を生み出すようにしないといけない」
 
 -機動的なM&A(合併・買収)を見据えたキャッシュ創出も課題です。
 「製品やサービスは比較的早いサイクルでキャッシュを生み出せる。一方、鉄道などの規模プロジェクトは最初の投資がかさみ、回収は後になる。キャッシュを生み出す時間軸の違いに注目し、M&Aも含めて最適な事業バランスを追求していく」
 
 -社会イノベーション事業といっても幅広いです。世界トップを目指す分野は。
 「電力・エネルギー、産業・流通・水、鉄道やビルなどのアーバン、金融・公共・ヘルスケアの注力4分野ではチャンピオンを目指す」
(聞き手=後藤信之)
※この回終わり

日刊工業新聞2016年12月29日の記事に加筆

後藤 信之

後藤 信之
01月01日
この記事のファシリテーター

最近の日立の懇親会では「レッツ・ルマーダ!」のかけ声で乾杯することも。社会イノベーション事業の拡大という戦略の基で、事業ポートフォリオ(構成)の組み替え、グローバル基準の人事制度導入、大規模な組織再編など多様な施策を打ち出した。出来上がった「点と線」を、ルマーダが「面」に仕上げる。戦う体制は整ってきた。18年度までの中期経営計画では営業利益率8%超を目標としているが、早期に2ケタに乗せないとライバルの背中はみえない。この1―2年で同10%超えに向けた手応えを感じさせる成果を出せるかが問われる。

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