官邸主導の改革に試練。薬価・診療報酬に懸念相次ぐ

 政府が経済財政諮問会議などでの議論をもとに「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」を策定し、公定価格と市場価格の差が大きい医療用医薬品は毎年薬価改定が行われることになった。だが医療者や労働組合からは、議論が官邸主導で進むことへの不満が噴出した。毎年改定以外の検討項目も残っている。2017年は改革の実効性向上に向け、多くの関係者が納得する具体的な施策を決めていけるかが問われる。

 病院や調剤薬局が仕入れる医療用医薬品の価格は、卸業者との交渉で決まる。時間の経過とともに市場実勢価格が下がり、公定価格である薬価との差が拡大する事例が多い。政府は薬価改定頻度を増やすことで薬剤費節減につなげたい考えだ。

 従来は2年に1回、市場実勢価や販売数量を調べる薬価調査が行われてきた。その結果に基づき、薬価改定も2年ごとに実施されている。16年12月20日にまとまった基本方針では、これらの頻度の見直しがうたわれた。

 大手医薬品卸事業者などについて毎年薬価調査を行い、公定価格との差額が大きい品目は薬価を改定する。調査方法の詳細や対象品目の選定基準は17年中に結論を出すとしている。

医師会が猛反発


 薬価の毎年改定は、経済財政諮問会議で民間議員から提案されてきた経緯がある。16年12月21日の同会議では薬価制度見直しの方向性が大筋で固まったことを受けてか、「診療報酬の改定についても諮問会議で議論すべきだ」との意見も出た。

 これに日本医師会が激しく反発。22日、診療報酬は中央社会保険医療協議会(中医協、厚生労働相の諮問機関)で議論すべきだとする緊急声明を出した。民間議員の意見については「大それた発言。青天のへきれきであり、極めて遺憾」と怒りをあらわにした。

 加えて日医は安倍晋三首相へ直談判したことを28日の記者会見で明らかにした。横倉義武会長が26日、安倍首相の真珠湾への出発前に電話会談をしたという。結果、「診療報酬については中医協で議論をしていくことをあらためて確認した」(横倉会長)。

 薬価制度改革に関しても、官邸主導で進むことへの懸念が多方面から出ている。日本化学エネルギー産業労働組合連合会は22日、平川純二会長と安原三紀子副会長兼医薬化粧品部会執行委員長の連名で緊急談話を発表。「製薬産業従事者の声を聞くことなく、産業と雇用に対して甚大な影響を及ぼす方針が示されたことは極めて遺憾」と訴えた。

 薬価制度改革の基本方針では、製薬業界が高い創薬力を持つ産業構造に転換することや、安定的な医薬品流通の確保などが必要とも指摘されている。改革は費用の削減だけにとどまらず複合的な観点から進める必要があるものの、具体策が未定の事項は依然として多い。
(文=斎藤弘和)

日刊工業新聞2016年12月30日

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
12月31日
この記事のファシリテーター

政府はスピード感を追求しつつも、できるだけ多くの関係者の納得を得て実効性を高められるかが試される。
(日刊工業新聞第ニ産業部・斎藤弘和)

この記事にコメントする

  

ファシリテーター紹介

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。