東電と関電は同志かライバルか

都市ガス自由化が「総合エネルギー事業」へと背中押す

 2017年4月のガス小売り全面自由化をにらんだ動きが活発化してきた。東京電力ホールディングス(HD)グループが26日、同年7月から関東地域の家庭向けに、都市ガスを販売すると発表。迎え撃つ東京ガスも、暮らしにかかわるサービスの実行体制を強化するなどの対抗策を打ち出し、最大の激戦区となる関東地域で対決ムードが高まった。

 東電HD傘下で電力小売り事業を手がけている東京電力エナジーパートナー(東電EP、東京都港区)が、家庭への都市ガス販売を始める。都市ガスの原料となる液化天然ガス(LNG)を火力発電の燃料として大量に購入できる利点を生かし、電気とガスをセットにした割安なメニューを開発して、初年度4万軒の顧客獲得を狙う。

 また、同社は液化石油ガス(LPG)販売大手の日本瓦斯(ニチガス)にも、家庭向け小売り事業の商材として、年間3万5000トンの都市ガスを卸供給する。ニチガスはこれらを使い、初年度11万軒の新規顧客の開拓を目指す。さらに両社が共同出資し、保安業務などを専門とする新会社を、17年度の早い時期に設立する方針だ。

 東電EPは自前の都市ガス製造設備も2年後をめどに整え、19年度にはニチガスと合わせて100万軒と、東京ガスの顧客の1割に相当する世帯に都市ガスを販売できる体制をつくる。同社の小早川智明社長は会見で「調達量で東京ガスの1・6倍に上るLNGの購買力を生かし、電気の顧客に都市ガスも低料金で提供する」考えを表明。ニチガスの和田真治社長も「既存の都市ガス事業者より安い料金で供給できる」と自信を示した。

 迎え撃つ東京ガスは都市ガスを軸に、暮らしにかかわるサービスを拡充することで、差別化を図る考えだ。

 この一環としてガスや電気、水回りの設備の販売や設計・施工を手がけるグループ3社を統括する新会社「東京ガスリビングホールディングス」(東京都港区)を、東京ガスの100%出資で2017年4月に設立すると26日発表した。キャプティ(同品川区)、リビングエンジニアリング(同港区)、東京ガスリモデリング(同台東区)の3子会社を新会社の傘下に置き、生活関連サービスの戦略立案・実行体制を強化することで、付加価値向上につなげる。

 併せて人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)の活用による事業基盤の強化も打ち出した。東京ガスの広瀬道明社長は同日の会見で「自由化を機に企業の変革に取り組む」と述べた。また広瀬社長は、家庭向け電力小売り事業の顧客数を、足元の56万4000件から20年までに「220万件に増やしたい」との意向も示した。

日刊工業新聞2016年12月27日



「関電・岩谷」連合、大ガスより最大8%安く


右から岩根関電社長、牧野岩谷産業会長兼CEO

 関西電力は27日、岩谷産業と共同出資で都市ガスの販売・保安を一体で取り組む新会社「関電ガスサポート」の設立に合意したと発表した。2017年4月の都市ガス小売り全面自由化と同時に参入する家庭分野などのガス料金メニューも提示。家庭向けは大阪ガスの現行料金に比べ最大8%安くする。18年3月までに20万件超の顧客獲得を目指し、営業を本格化する。

 新会社の資本金は1億円で出資比率は関電51%、岩谷49%、関電が社長を送り込み17年1月末にも設立。近畿2府4県で4月までに販売窓口50拠点、スタッフ250人体制を整える。

 同日会見した関電の岩根茂樹社長は「本格的なエネルギー新時代の幕開けだ。岩谷産業とタッグを組み全力で取り組む」とした。岩谷の牧野明次会長兼CEO(最高経営責任者)は「LPG事業者にとっても大きなチャンスだ。(かつてLPGを使っていた)顔なじみの客に関電ガスを販売したい」と意欲を示した。

 料金メニューでは、家庭向け以外に、ガス使用量が月数百―数千立方メートルの法人向けでも大阪ガスの同等プランに比べて2割程度安くなる可能性がある。

日刊工業新聞2016年12月28日

永里 善彦

永里 善彦
12月30日
この記事のファシリテーター

2017年4月に都市ガス小売り全面自由化が始まる。自由化の対象になるガスの利用者は家庭を中心に全国で2,500万軒を超え、市場規模は2.4兆円にのぼる。電力会社や石油会社などが新規参入することが予想され顧客獲得競争が激しくなる。東電はニチガスと連携して、19年度には100万軒と、東京ガスの顧客の1割に相当する世帯に都市ガスを販売できる体制をつくる。いっぽう関電は岩谷産業と組み、家庭向けを大阪ガスの現行料金に比べ最大8%安く提供し、18年3月までに20万軒超の顧客獲得を目指す。都市ガス小売り全面自由化は、電力・ガス・石油を組み合わせたエネルギーのセット販売を可能にし、「総合エネルギー事業」への変容を迫り、地域を超えた事業者の連携が加速しよう。利用者にとっては歓迎すべき事象である。

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