トヨタ「脱・三河の鍛冶屋」 つながるクルマを収益源に

 自動車メーカーが“つながる車”を強化している。トヨタ自動車は2020年までに日米で販売するほぼ全車に通信機を搭載し、日産自動車も17年から通信機をオプション設定する。カーナビゲーションシステムやスマートフォンを通じた情報サービスはこれまでもあったが、車両情報を詳細に管理して事前故障診断などのきめ細かいサービスにつなげる。トヨタはつながる車を基に、シェアリング社会を見据えた移動サービスの収益化も模索する。

全車に通信機を搭載


 「いつまでも『三河の鍛冶屋』でいいわけがない。トヨタは移動サービスのプラットフォーマーにならなくてはいけない」。トヨタの友山茂樹専務役員は11月の事業説明会で記者団にこう話した。

 同社は20年までに日米で販売するほぼすべての乗用車に車載通信機(DCM)を搭載。DCMが吸い上げた情報で基盤(プラットフォーム)を構築し、カーシェアやライドシェア(相乗り)、テレマティクス保険といった車を使ったあらゆるサービス事業者と提携する戦略を描く。

 


 例えばライドシェア先進地の米国ではウーバーテクノロジーズと今春に資本・業務提携。ウーバーの運転手が得た収入を車両のリース料金の支払いに充てられる「フレキシブルリース」の実証サービスを年内に米国で始める。10月には、個人間カーシェア事業の米ゲットアラウンド(カリフォルニア州)に出資。トヨタが開発したスマホで車の鍵の開閉やエンジン始動ができるシステムの実証実験を17年1月に米国で始める。いずれもプラットフォームを活用するサービスだ。

「クラウドに付加価値が移る」


 トヨタが外部との提携を本格化する背景にあるのは猛烈な危機感だ。「つながる車にしても自動運転にしても、将来はクラウドに付加価値が移る可能性がある。携帯電話でも同じことが起きた」(友山専務役員)。車を作って売る事業モデルから、車を使った移動サービスにも収益源を広げる必要があるとの考えだ。

 「新プリウスPHVはコネクティッド戦略の先陣を切るクルマ」(友山専務役員)だ。今冬発売予定の新型プラグインハイブリッド車(PHV)「プリウスPHV」はほぼ全車にDCMを標準搭載し、通信料は3年間無料。スマホから車の充電確認やエアコン操作をできるようにするほか、走行情報などのビッグデータ(大量データ)を駆使して車の故障可能性を事前に知らせるサービスなども始める。

11月に東京都内で開いたコネクティッド戦略の説明会


 つながる車のつながり方は二つに大別できる。米アップルの車載ソフトウエア「カープレー」や米グーグルの同「アンドロイドオート」のようにスマホによるものと、トヨタのDCMのように通信機を組み込むものだ。IHSマークイットによれば通信機型のつながる車は22年に15年比3倍に拡大する。スマホ型のつながる車よりも拡大するとの見方だ。「事故時の緊急コールや車両盗難時の追跡などの機能は通信機でないと原則できない」と棚町悟郎主席エキスパートは見る。また、スマホが提供する音楽などの情報サービスと違って「車両情報は機密性が高く、別回線の通信機でつながる必要がある」と指摘する。

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杉本 要

杉本 要
12月28日
この記事のファシリテーター

クルマ版IoTともいえるコネクティッドカー。車メーカー対IT大手(グーグルなど)の図式で語られがちですが、トヨタの友山専務はそれぞれのプラットフォームが補完しあえるのではないか、との見方を示していました。いずれにせよ、ネットにつなぐことで生み出せるのサービスの収益を、車メーカーとして取っていきたいところでしょう。

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