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完全自動運転が実現したら運転免許はいらなくなる?

社会システムと的確に連動する必要も
 運転免許センターには開場前から更新の行列ができていた。収入印紙の購入、視力検査、顔写真の撮影と、職員が手際よく作業を進める。最後に教室に案内されて「優良講習」の開始を待つ。

 5年前にも同じ場所で講習を受けたはずだが、何も記憶に残っていない。教室を埋める60人前後の老若男女に、わずか30分間で何を話すのか。集中して聞いてみようと思った。

 免許制度が新しくなり、運転できる車格が変わることと、75歳以上の高齢者の更新手続きが変わることが主な内容。衝突実験の動画を使い、後部座席でもシートベルトをきちんとしないと危険だというメッセージで締めた。当然ながらしゃくし定規だった。

 世間では自動運転が脚光を浴びている。ボストン・コンサルティングの予測によれば、2035年には世界の新車販売の4分の1が部分自動運転車か完全自動運転車になるという。完全自動運転が現実のものになれば、免許そのものが必要なくなるかもしれない。

 そもそも取り締まりに意識が傾きがちな警察当局は、そんな近未来をどう考えるのか。あるいは「自動運転車の免許」が新しくできて、その交付を受けるために将来もずっと、このセンターに来ることになるのかも…。
日刊工業新聞2016年12月26日
原直史
原直史 Hara Naofumi
以前も触れたが、自動運転技術の進歩は高齢運転者にとって大きな福音になる可能性がある。そのためには、自動運転技術とその評価が運転免許制度を含めた社会システムと的確に連動する必要がある。現在AT車限定という免許があるが、将来は搭載される安全運転補助技術に応じて免許証のランクももっと細分化され、運転者の状況に応じて付与されてもいい。一定年齢以上の人は、安全運転補助技術が搭載されていない車は運転できないとすることも可能だ。そうすれば今問題となっている高齢者の事故は減る。安全性が高まれば、高齢でも運転できる人口が増え、高齢者の活動範囲は広がる可能性もある。

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