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タカタのスポンサー選定「早くて来月」 再建へ思惑交錯

車メーカーは新規受注が見込めない状況で事業継続を模索
タカタのスポンサー選定「早くて来月」 再建へ思惑交錯

シートベルトを製造するタカタの彦根製造所

 タカタの経営再建計画の取りまとめが2017年以降にズレ込みそうだ。取引先の自動車メーカー幹部はタカタが募集した出資者(スポンサー)の選定が、「早くて1月終わりになる」との見通しを示した。タカタは16年内の再建計画策定を望むが、車メーカーはリコール(回収・無償修理)対応を含めた製品の安定供給を優先しており、関係者の調整はなおも時間を要することになりそうだ。

 「タカタは手元資金も悪化していないはずで、再建を急ぐ理由がどこにもない」。車メーカー幹部は再建策の早期取りまとめをタカタに求めているわけでなく、車メーカーが対応しなければならない理由もないとの立場を明確にする。

 またスポンサーの選定時期については、「早くて1月終わり。何もなければ2月になる」との見通しも示した。一方、タカタの野村洋一郎取締役は11月の決算会見で、スポンサーの選定を含む再建計画の策定時期について「希望は年内と思っている」と述べており、車メーカーとの思惑の違いが浮き彫りとなった。

 別の車メーカー幹部は、再建はタカタが設置した弁護士らで構成する外部専門家委員会が進めているとし、「直接口を挟んでいるつもりはない」と指摘。ただリコールへの継続的な対応や交換部品を含む製品の安定供給などを引き続き求めていくとし、再建により生産が滞るなどの混乱が生じないよう「供給責任は果たしてほしい」と強調した。

 タカタは2月に外部専門家委員会を設置し、車メーカーとのリコール費用問題の解決に乗り出した。一方、米当局とは5月にエアバッグ部品の追加リコールで合意。火薬に乾燥剤を使用していない全「インフレーター」(膨張装置)が対象となり、リコールは世界で1億個超に広がり、費用は1兆円規模に膨らむとの試算もある。

 外部専門委は秋口からスポンサーの募集を本格化している。これまでにスウェーデンの車安全部品大手オートリブや米車部品大手キー・セイフティー・システムズなど数社に絞り込んだとされる。

 リコール責任は明確になっていないが、仮に車メーカーから一斉に費用を請求されれば、タカタは債務超過に陥る可能性が高い。車メーカーは事業の継続性を、スポンサーは債務の確定を望むとされ、再建手法も日本のタカタ本体を私的整理、米国子会社を法的整理する方法などが検討されている。

 タカタの野村取締役は製品の安定供給のためには私的整理以外にないとし、「グローバルで私的整理でやりたい」との意向も表明している。

 一方、車メーカー幹部はスポンサー選定後の事業環境について、「新規受注が当分見込めない状況で事業の継続を模索するしかない」との厳しい見通しを示す。
日刊工業新聞2016年12月19日
池田勝敏
池田勝敏 Ikeda Toshikatsu 編集局経済部 編集委員
スポンサーを含め関係者の合意を見いだすには課題もあり、再建の行方はなおも不透明だといえそうだ。

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