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なぜ日本人は「ダース・ベイダー」が好きなのか。最新作も絶好調

崇拝の対象ともなる歴史的なイメージに多くを負っている
 「彼は今や人間というより機械だ...」

 禁欲的なジェダイマスターであるオビ=ワン・ケノービは、映画『スター・ウォーズ』3部作の中で、サイバネティクス技術で機能を強化した敵役のダース・ベイダーについて、こう断言した。

 この架空のサイボーグは長い間、シリーズでの最も注目される人気キャラクターとなっているが、とくに日本でその傾向が強いのは偶然ではない。

 『スター・ウォーズ』の生みの親かつ原作者で、監督を務めたジョージ・ルーカスは、黒澤明監督を賞賛し、彼の日本映画に大きな影響を受けた(特にスターウォーズは『隠し砦(とりで)の三悪人』の物語を元に考えられた)。

 当然のことながら、スター・ウォーズの衣装は、伝統的な日本の甲冑(かっちゅう)からヒントを受けており、それはダース・ベイダーのロボットの体の上に載った象徴的なマスクとヘルメットからも見て取れる。これらはまぎれもなく、日本の封建時代の武士がかぶっていた頭形兜(ずなりかぶと)から派生したものだ。

 スター・ウォーズの宇宙に我々が出会ってから38年、12月18日には新作が一斉公開される。そのブランドは絶大で人気も相変わらずだ。スター・ウォーズをテーマにしたガジェット(オモチャ)、衣料品、家庭用品などは日本全国で手に入り、うちダース・ベイダーのキャラクターグッズが多くを占める。

 製品のブランド化に加えて、マントをはおったサイボーグは、グッドイヤーのタイヤや、福岡で毎年開催される博多どんたくの宣伝に使われ、スクウェア・エニックスとバンダイは両社ともサムライの姿をしたダース・ベイダーのフィギュアを販売している。

 自衛隊でさえ、2015年の札幌雪まつりで巨大なダース・ベイダーの彫刻を作ったほどだ。このような例はほかにもたくさんある。

 日本でダース・ベイダー人気が長続きしているのは、崇拝の対象ともなる歴史的なイメージに多くを負っている。だが、おそらく、人間に働きかける普遍的な何かがあるのだろう。

 映画のオリジナル3部作(エピソード4-6)の最後でダース・ベイダーが亡くなる前、彼は仲たがいをした息子の命を救い、いくらか人間性を取り戻す。

 一方で、我々は肉体の能力を高めるとともに、その肉体は着実に機械化してきている。架空の悪役サイボーグに対する我々の賞賛と共感はたぶん、いずれ人工的に機能が拡張された人間を日常生活に受け入れ、それが主流になることの前ぶれなのではないか。

 もちろん、こんなことはまったくの憶測にすぎず、私たちが彼に抱く魅力は、もっと単純なのかもしれない。邪悪ではあるが、最後に名誉を挽回した人間機械、そしてサムライのヘルメットをかぶり、めちゃくちゃ格好いいという理由で。どうか皆さん、新作映画を楽しんでください!
(文=リノ・J・ティブキー 『アキハバラニュース』エディター)
                   

<頭形兜(左)とダース・ベイダーのヘルメット(Zunari Kabuto: Wikimedia Commons; Darth Vader: © Lucasfilm, Ltd.>

日刊工業新聞2015年12月16日



「ローグ・ワン」全米1位、ディズニーの試金石に


 16日に全米で公開された「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」が初登場首位で、いきなり1億5500万ドル(約182億円)の興行収入を稼いだ。12月公開映画として歴代2番目、今年の公開映画でも2番目で、昨年の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』並みの熱狂ぶりとなっている。

 日本でも興収ランキングで1位になった。先週末の土日2日間で動員41万3600人、興収6億5300万円を記録し、3日間での興収は9億2000万円を突破した。

 2012年に ルーカスフィルムを40億ドルで買収した米ウォルト・ディズニーにとって、「スター・ウォーズ」シリーズで初のスピンオフとなる同作品は、ジョージ・ルーカス氏が製作総指揮した3部作を超える物語にすることができるかどうかの試金石となる。

 ディズニーは「フォースの覚醒」の続編となる「スター・ウォーズ/エピソード8」(仮題)を17年12月に、若き日のハン・ソロを描いた別のスピンオフ作品を18年5月にそれぞれ公開する予定。

明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
初日に見ました。個人的にはエピソード1~3よりはるかによい。レイア姫役のC・フィッシャーさんが心臓発作という報道が。ぜひ元気になってもらいたい。

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