原子2個分という世界最小のラジオで聴くクリスマスソング

米ハーバード大が開発、宇宙探査や生体用センサーにも応用期待

 本体部分の大きさがわずか原子2個分という世界最小のラジオ受信器を、米ハーバード大学の研究者が開発した。ダイヤモンドの結晶欠陥が持つ特殊な性質を利用し、高温といった厳しい環境でもきちんと機能するという。ダイヤモンドは生体適合性も高いことから、宇宙での探査や通信、生体用の高感度センサーなどに将来応用できる可能性があるとしている。

 ラジオは通常、電源と受信器、空中を飛び交う高い周波数の電磁波信号を低い周波数に変える変換器、特定の周波数の電磁波に同調するチューナー、それにスピーカーという5種類の部品で構成される。

 ハーバード大工学・応用科学大学院のマルコ・ロンカー教授(電気工学)らは、このうち受信器の部分を小さなダイヤモンド結晶で作製。350度Cの高温環境で、電磁波に載せた音楽を受信し、再生することに成功した。成果は米物理学会の応用物理学専門誌フィジカル・レビュー・アプライドに15日掲載された。

 研究チームが利用したのが、「ダイヤモンド窒素−空孔中心(NVC)」と言われるダイヤモンド結晶特有の性質。NVCとはダイヤモンド結晶中の1個の炭素を窒素に置き換えたうえ、その隣の炭素原子1個を取り除いて何もない状態にした格子欠陥を指す。光子を1個ずつ放出したり、非常に弱い磁場を検知したりできる量子素子としての特性を持ち、量子コンピューティングや光学、超高感度センサーなどへの応用が期待されている。

 今回の研究では、まず緑色のレーザー光をダイヤモンドに照射してNVCの電子を励起し、その電子がラジオ用のFM波を含めて電磁波への感度が高まった状態にする。同時に、ダイヤモンドの周りには電磁石で強い電磁場を作り、その周波数を変えることでNVCが受信する電磁波の周波数を調整するチューナーの役目を果たすようにした。

 こうしておいて、NVCが目的のラジオ波を受信すると、そこに載せられていた音声信号を赤い色の光に変換し、放出する。さらに、その信号を光ダイオードを使って電流に変換し、通常のスピーカーやヘッドフォンで音声として聴くことができる仕組みを作り上げた。

 下記の動画では、実際にこのラジオが受信したクリスマスソングとして、アンディ・ウィリアムズの "It's The Most Wonderful Time Of The Year" を聴くことができる。

2016年12月24日日刊工業新聞電子版
ハーバード大学の発表

藤元 正

藤元 正
12月25日
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上のyoutubeの動画には、原子2個分の欠陥をもじって「2人の原爆級の欠陥品(two atomic imperfections)による大統領選は終わったと思っていたが」と皮肉のきいたコメントが載っていました。NVCにならって、次期大統領には欠陥品なりの別の大きな利点がある、というところを期待したいです。

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