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ホンダとグーグルの自動運転実験は元米海軍施設で?

両社が共同研究を発表
ホンダとグーグルの自動運転実験は元米海軍施設で?

ホンダの自動運転テスト(米カリフォルニア州)

 ホンダは22日、米グーグルの持ち株会社アルファベットから分社化したウェイモと、自動運転技術の共同研究に向けた検討を始めたと発表した。研究内容の詳細は今後詰めるが、米国の公道で自動運転車の実証実験を行う。

 ホンダは2020年頃に、高速道路での利用を見込んだ部分的な自動運転車の市販化に向けて開発を進めているが、グーグルと組んで完全自動運転車の事業性も検討する。

 ウェイモのセンサーやソフトウエア、車載コンピューターなどをホンダの提供する車両に搭載し、実験する。

 一般に自動運転の自動化レベルは4段階に分かれる。ホンダなど自動車メーカーが自動化レベルの1段ずつレベルを上げていく取り組みなのに対し、グーグルは始めから完全自動運転を目指しているとされる。これについてホンダ側は、「異なる技術アプローチで学べることがある」(広報)としている。

日刊工業新聞電子版2016年12月22日



「研究は隠れたところでじっくり進めたい」


 ホンダは米カリフォルニア州コントラコスタ郡の元海軍施設「ゴーメンタム・ステーション」で市街地を想定した自動運転のテストを公開した。信号機のある交差点を右折するシーンをテストした。ゴーストタウンのような荒廃した環境を生かして、ひそやかに自動運転技術のテストを重ねている。

 本田技術研究所の米子会社で自動運転技術の開発責任者である藤村希久雄氏は「市街地を想定した自動運転のテストにはおあつらえ向きだ」と話す。サンフランシスコ市街から北東約50キロメートルに位置するゴーメンタムは、米海軍が利用していた武器施設だったが、郡が研究開発施設として民間に開放した。広さは20平方キロメートルで新宿区と同程度。当時の道路や線路などのインフラが残っているが長年手つかずのまま。道路や線路は荒廃し、倒れかけた標識、さび付いた倉庫が目に付き、さながらゴーストタウンだ。

 その一角に、はっきりとした白線が引かれたゾーンがある。ホンダが自動運転のテストのために引いたものだ。仮設の信号機も設置し、田舎道の交差点を模擬した。「好みに実験場をアレンジできるのがゴーメンタムの良いところ」(藤村氏)という。実験用のカメラ、レーダー、レーザーを搭載したホンダ車が、右レーンを走行し前方の信号機を認識して交差点を右折した。運転席には研究者が乗車するが、原則ハンドルから手を離してテストをしている。

 公開したのは車両1台のみのテストだったが、他の車両もいる中での複雑なシーンや、丁字路の進入、合流などさまざまなシーンをテストしている。現在は全長2・5キロメートルのコースでテストしており、直線では最大で時速100キロメートル程度出るシーンもあるという。市街地での課題を洗い出し、それを解決する実験を重ねている。

 ホンダは2020年をめどに、高速道路での自動運転機能を搭載した車両を発売する計画を公表している。市街地での自動運転は高速道路よりも技術の難易度が高く、「ゴーメンタムのテストは高速道路シーンの先の将来を見据えたもの。課題は山積しており、特に周辺の状況を元に判断する技術が難しい」と藤村氏は話す。

日刊工業新聞2016年11月17日



 
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
カリフォルニア州は自動運転のテスト環境の整備が進んでいることで有名で、米グーグルが公道でのテストを行っている。ホンダも公道テストの免許を昨年取ったが「自動運転の研究は隠れたところでじっくり進めたい」としてゴーメンタムで技術を熟成する考えだ。

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