野菜の高騰期、家計を支えた豆苗。トップメーカーの戦略とは?

 カイワレ大根や豆苗といった発芽野菜でトップの村上農園。1996年の病原性大腸菌「O157」騒ぎによるピンチをテコに豆苗などの新規野菜や新規営業ルートを開拓し勝ち残ってきた。売上高100億円が見えてきた現在、2025年に同300億円、35年に同1000億円という大きな中長期目標を掲げる。成長志向の背後には、変化を強いられる日本の農業ビジネスに挑む意欲がある。

年商の3分の1を投じ、豆苗工場建設


 同社の歴史はいくつかの時期に分かれる。まずは創業からO157危機まで。80年代のカイワレブームで参入が相次ぎ、業界は過当競争に陥った。創業者の故・村上秋人は経営が傾いた同業他社を買収するなどで全国に7カ所の工場を持つトップメーカーに育てた。

 次が96年から07年の村上清貴の社長就任まで。O157危機を受け、前年に参入した豆苗にシフト。営業体制も、青果市場向けからスーパーなどの量販店に直接営業するように変えた。こうした取り組みにより経営危機を乗り越え、ブロッコリースプラウトなどの機能性野菜も拡充。売上高は30億円を超えた。

村上清貴氏


そんな中で社長に就いた村上は伸び悩みを感じていたという。「テレビで取り上げられた時は売れるけど、年商は30億円そこそこが続いていた」。ただ豆苗はコンスタントに伸びており、10年には山梨県北杜市に豆苗専用工場の建設を決める(11年11月稼働)。第1期の投資額10億円は年商の3分の1を投じる決断だった。

この投資が大きかった。「工場を作ったことで豆苗のメディア露出が増え、社員も危機感を持ち結束した」(同)。再成長をはじめた村上農園は、12年12月期に売上高40億円を、15年12月期には同50億円を突破。今12月期は90億円を見込む。

今後の中長期目標達成について、25年の300億円は豆苗など既存商品の成長と、オランダ企業と提携して参入した高級野菜などで計算が立つとする。

カギは海外と新野菜開発


 35年の売上高1000億円については具体的な姿は見えていない。だがカギの一つが海外展開。

 もう一つは日本の農業が高齢化と人口減少から変化を強いられる中で、会社の方向性が見えてくるのではないかということだ。村上は「新しい野菜を世に定着させる方法は学んだ。機械化し効率生産できる新しい野菜の開発で(1000億円を)実現したい」と話している。
(敬称略、文=広島編集委員・清水信彦)

【企業プロフィル】
▽住所=広島市佐伯区五日市中央6の1888の1▽社長=村上清貴氏▽設立=78年(昭53)1月▽売上高=58億9900万円(15年12月期)

日刊工業新聞2016年12月20日

昆 梓紗

昆 梓紗
12月20日
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村上農園の豆苗、今年何度購入したことか…。ただでさえ安価なのに、袋に「もう一度収穫できます!」と書いてあるのに消費者へのやさしさを感じました。
安定供給が可能な新野菜はさまざまな地域で需要が高いと思います。

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