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世界の2大航空機メーカーやMRJも引きつける多摩川精機の部品力

「電動の弱点のパワー不足が解決すれば、大型機にまで波及する」(関社長)
世界の2大航空機メーカーやMRJも引きつける多摩川精機の部品力

操縦かんの動きを検出して電気信号に変換するセンサーユニット

 長野県飯田市に、世界の航空機メーカーに欠かせない存在となっている企業がある。多摩川精機(関重夫社長)だ。飛行制御装置用センサーを手がけ、米ボーイングの次世代小型旅客機「737MAX」、欧州エアバスの中大型機「A350」と、2大メーカーの主力機の受注実績を持つ。

 海外の顧客が来社することも多く、関社長は「期待の高さを感じている」と手応えを実感する。三菱航空機(愛知県豊山町)が開発中の国産小型ジェット旅客機「MRJ」のセンサーも受注した。

 1938年の創業以来、航空機関連の事業に取り組む。戦前には、爆撃機の燃料計を手がけていた。戦後も防衛向けが中心だったが、2006年に民間向けにも参入した。

 15年7月には、民間航空機事業本部を発足させた。複数拠点に分散していた開発や営業人員を集約して効率化。独立採算制に近い形にした。

 最近、意識するのが、就航済みの航空機の部品更新需要だ。関社長は「他社が納入した部品の更新を狙いたい」と意気込む。更新需要に注目するのは、新造機からの受注が期待しづらいからだ。

 ボーイングとエアバスは11年以降、民間航空機の受注が急激に伸び、14年はともに過去最高を記録した。だが、15年以降は落ち込みが続く。今後20年の長期需要は大きく伸びるとみられるが、足元は更新需要に頼ることになりそうだ。

 長期的な技術動向では、エンジンや装備品の電動化が追い風だ。自動車、建設機械などのように航空機も電動化が進み、センサーやモーターの需要が広がりつつある。関社長は「電動の弱点のパワー不足が解決すれば、大型機にまで波及する」と見通す。

 地元中小企業が参加する航空機産業クラスター「エアロスペース飯田」とは、部品の発注などで連携を進める。関社長は「サプライチェーン強化のため、彼らと高め合いたい」と抱負を述べる。
(文=名古屋・戸村智幸)
【企業メモ】
産業用ロボットなどの工場設備や、自動車向けのセンサーやモーターが主力事業。飯田市出身の萩本博市氏が1938年に創業し、42年に飯田工場を建設した。94年には東京都大田区から本社を移転した。15年11月期の連結売上高は489億円。民間航空機向けの売上高は、16年11月期に20億円を見込む。
日刊工業新聞2016年12月19日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
今年の初めには2020年をめどに民間機関連の売上高を現在比約3倍の60億円規模に引き上げる計画でいたが、足元の受注はどうだろう?中長期の視点で開発力を磨いて欲しい。多摩川精機のような実力中堅企業が地方でもっと出てくればクラスター形成の可能性も広がる。

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