TDKが注力する自動車分野、次世代へ仕込み進む

EV向け積層セラミックコンデンサーで試作ライン

 TDKは電気自動車(EV)向け積層セラミックコンデンサー(MLCC)の開発を積極化する。本荘工場(秋田県由利本荘市)にEV向けMLCCの試作ラインを導入した。今後、試作ラインを利用し、形状の小さな高電圧部品や150度Cの高温に対応できる部品を開発する。さらに非接触給電やプラグイン充電に対応したMLCC製品を拡充し、国内外の自動車メーカーへの納入を狙う。

 近年、EV向けのMLCCは、非接触給電など新技術が普及しつつある。また高電圧化・高容量化が進んでおり、将来は630―1000ボルト対応のMLCCが中心になる。こうした需要の変化を受け、EVの車載充電器に使う共振回路の需要が増加することから開発に力を注ぐ。

 すでに12月からEV向けMLCCを相次いで投入している。温度変化による容量変化が0・3%以内のC0GタイプのMLCCシリーズに、樹脂電極品と金属端子付メガキャップ製品を加えた。基板のたわみによるクラックを防ぐほか、ハンダクラック対策などをEV向けとして先駆けて搭載した。

 TDKは相対的に大きな形状のEV向けMLCCで、競合他社に比べて約2倍のラインアップを持っているという。特に高い静電容量を持つ製品が多い。

石黒社長インタビュー


 TDKが2016年に実行した大型買収が事業成長に寄与し始めている。すでに買収先との共同プロジェクトが浮上しており、今後、獲得した技術を応用・融合し、新製品の創出に生かす構えだ。また17年以降には大規模な成長投資を実施し「磁気複合センサー」の開発などに重点配分する。石黒成直社長に経営戦略を聞いた。
石黒社長


 ―注力分野のトンネル磁気抵抗素子(TMR)センサーをどう応用しますか。
 「買収したスイスのミクロナスのホール素子センサーに、TMRセンサーを組み合わせた『磁気複合センサー』を開発中だ。次世代自動車向けであり、冗長性を高める。また磁気複合センサーは、電気自動車(EV)のバッテリー継続監視に使う電流検知センサーとしての用途もある。現在、TDKが対象とするセンサー市場は年間8000億円だが、今後5年間で1兆円の市場規模になる見通しだ。この市場でシェア20%を目標にしたい」

 ―好調のリチウム電池の戦略は。
「子会社の香港アンプレックステクノロジー(ATL)で製造するリチウムポリマー電池は、スマートフォン向けが75%を占めている。残りはパソコン・タブレット端末や飛行ロボット(ドローン)。今後は、産業機器や産業ロボット向けのシェアを増やすべきだろう」

 ―設備投資への考え方は。
「市場の拡大に合わせて行う。ATLは単電池(シングルセル)を大量生産している。産業向けが伸びれば、複数の電池を組み合わせる生産設備が必要になるだろう。また国内拠点では固体電池などの研究を進める」

 ―部品を複合するユニット化の取り組みを教えてください。
「12月から東芝と共同事業会社を立ち上げた。コンバーターとモーターを組み合わせ、車載用インバーターのユニット化を行う。これを足がかりに、EVの電源・電力管理を手中に収めたい。また、ユニット製品は最終顧客との接点になる。部品の仕様や設計などにも関与できるため、自社製品の改良につながる。部品はどうあるべきか、最終顧客と対話できる時代になった」

 ―EVの非接触給電を推進していますね。
「TDKは磁性技術が技術の源泉であり、最大の強み。非接触給電はその強みを生かせる場所だ。ただ、インフラ的な要素も含んでいるため、普及には時間がかかる。現在、国内で駐車場機器メーカーなどと非接触給電の実証実験を行っている。電力の利得など技術的な問題だけでなく、運用上の課題を浮き彫りにするためだ。TDKとして障害をどれだけ取り除けるか先駆けて準備している」

日刊工業新聞2016年12月13日

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
12月18日
この記事のファシリテーター

取材で印象的だったのは「組み合わせ」という言葉だ。センサーや電源製品などは複合化が進む。買収や提携を矢継ぎ早に行った同社も複合化への対応が主な狙いだ。複合化の過程で次世代電子部品のヒントがあるという。要素技術など手数をそろえ、部品を融合させた新たな技術の創出に期待したい。
(日刊工業新聞第一産業部・渡辺光太)

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