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なぜ「ひんやりジェルマット」は倒産した?

ヒラカワコーポレーション、多額の設備投資がアダに
 寝具や衣料品などの関連製品を扱っていたヒラカワコーポレーションは11月9日、東京地裁より破産手続き開始決定を受けた。夏場の涼感寝具「ひんやりジェルマット」などのヒット商品で業績を伸ばした同社はなぜ倒産に至ったのか。

 2011年3月に発生した東日本大震災。それ以降の節電意識の高まりから、主力商品のひんやりジェルマットの販売が大幅に増加、12年1月期の売上高は前期比2倍超の42億円を計上していた。

 これを機に攻勢をかけようと、11年夏には福島県白河市に白河工場を建設したほか、中央区日本橋に本社ビルも建設。翌12年1月ごろには、配送センターも開設した。しかし、こうした多額の設備投資がアダとなった。

 12年以降は、節電への取り組みが沈静化していくに従い、ひんやりジェルマットの需要は急減。その後は、韓国を中心とした東アジアなど、海外向けの拡販で再び売り上げを伸ばしたが、国内における節電需要を読み誤った結果、当初想定していた利益は得られず、多額の設備投資に見合う回収はできなかった。

 そうした中、羽毛に代わる新素材の人工毛ブランドを使った寝具で巻き返しを図ろうと、新たに設備投資を進めていた。だが、特許権侵害の可能性が指摘されるなど、その販売も思うように進まず、16年1月期には赤字に転落。

 こうした度重なる設備投資に伴う銀行借り入れやリース料負担で資金繰りが逼迫(ひっぱく)、7月に事業を停止し、会社を整理する方向で残務整理に入っていた。

 設備投資の判断とタイミングは非常に難しい。ヒラカワコーポレーションのように需要を読み間違えれば投資回収はできず、手元に残るのは借り入れ負担だけである。過剰投資は経営破綻に直結しかねない大きな問題。取引先の設備投資は適切か否か。気をつけてみていきたいところだ。
(文=帝国データバンク情報部)

<データ>
商号:(株)ヒラカワコーポレーション
住所:東京都中央区日本橋蛎殻町1―18―5
代表:平川 尚市氏
資本金:3000万円
売上:約36億8100万円(16年1月期)
負債:約19億4700万円
日刊工業新聞2016年12月13日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
今の販売状況はどのような背景からもたらされているか見極めないといけない。営業部門のミスリードやバイアスが過剰投資を生むのはよくあるケース。

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