ロボット工学の技術者、農業支援の道へ。参入1年目でも黒字化できる理由とは?

未経験でも黒字にする仕組み


 みつヴィレッジは地域活性化を旗印に農業参入者を支援している。創業した八百伸弥は大阪大学大学院でロボット工学を専攻した技術者だ。船井総合研究所に入社し食品メーカーへの経営コンサルティングなどを手がけた後、2014年3月に退職。家業の網干造船所に入社した。厳しい造船業を見越して農業分野に着目。温度や湿度など不確定要素をITで管理し、農業未経験者でも計画通りに収穫できるビジネスモデルを構築した。自社のビニールハウスで実証栽培もしており、栄養価の高いトマトやイチゴは連日完売が続いている。

 なぜ農業支援だったのか。八百は「地域を活性化したい」ためだと説明する。人口減少が続く地方でも取り組むことができ、農業未経験でも1年目から黒字化できる仕組みにしたという。これにより地域の雇用を生むだけでなく、収穫、販売を通じて地域でコミュニティーが生まれる。

 このビネスモデルに賛同した岐阜県の建設会社や愛知県の精密機械メーカーなどが八百の指導を受けて農業に参入した。17年は、埼玉や石川、大阪などでもスタートする。

 ビジネスモデルをさらに高度なものにするため、現在、本社近くに新たにビニールハウスを建設中。気化熱を利用した栽培方法が確立できれば、一年中、栄養価の高いトマトが収穫できるようになる。

モノづくりカフェも運営


 八百は現在、「モノづくりを通じて、多世代の人がゆるやかにつながる場所を提供したい」と、地域密着型カフェの運営にも乗り出している。来年3月に「リバースヴィレッジ」(姫路市勝原区)をオープンする予定だ。カフェには3Dプリンターや食品用レーザー加工機、ミシンなど1500万円相当の設備を導入する。

 洋裁やデザインが得意な人によるワークショップ、料理が得意な人による料理教室などを開いて、モノづくりを体験しながら、世代を超えて交流できるようにする。八百は「集う人たちが新たな発想でやりたいことを企画して、人の輪が広がっていく場所に」と考えている。宣伝前にもかかわらず、育児のため退職した女性や起業希望の人たちが自然に集まり、イベント案を練り始めている。

唯一無二の存在


 八百は会社を大きくする気はない。「少しでも地域に貢献して、地域になくてはならない存在になりたい」と話す。知見を持った技術者による地域活性化の取り組みに、寄せられる期待は大きい。
(敬称略、文=姫路支局長・丸山美和)

【企業プロフィル】
▽社長=八百伸弥氏
▽住所=兵庫県姫路市網干区大江島805
▽資本金=200万円
▽設立=14年(平26)10月


日刊工業新聞2016年12月19日

昆 梓紗

昆 梓紗
12月19日
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ビジネスモデルを広げるだけでなく、地域に埋もれていたリソースを掘り起し、つないでいく取組みは他の地域でも横展開できそうです。

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