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「生茶」のヒットメーカー、湖池屋に転身。ポテチでも“こだわり”追求

キリンビバレッジの佐藤前社長は新天地でどんな商品を生み出すか
「生茶」のヒットメーカー、湖池屋に転身。ポテチでも“こだわり”追求

佐藤社長(左)

 湖池屋は2017年2月に、ポテトチップスの戦略新商品を発売する。1962年に国産ポテチを開発したメーカーとして国産原料などにこだわり、高付加価値を訴求する。同社は業界2位だが、首位のカルビーに水をあけられている。2016年10月にグループを再編し社名もフレンテから変更、新社長に元キリンビバレッジ社長の佐藤章氏を迎え入れた。新商品は新体制の第1弾になる。

 「ライバル大手の行動を見るのでなく、新商品で新しい別の世界をつくる」。新商品の発表会見で、佐藤社長はこう強調した。ポテチ市場は健康を気にする消費者の志向もあり縮小が続く。

 店頭の価格競争が、これに追い打ちをかける。スーパーで子ども向け菓子として特売になることが多く、定価150円近い商品が88円で売られることも珍しくない。

 戦略商品の実売価格は150円前後を見込む。ブランド価値を高めるため「最低120円以上は維持したい」と担当者は話す。

 佐藤社長は高付加価値を追求する理由に少子高齢化、女性の社会進出を挙げ「大人の商品になるに連れ、健康や原料のこだわりが求められる。味を変えるだけの商品開発競争に未来はない」と指摘する。

 佐藤社長はキリンビバ社長時代、価格が1本200円の飲料「キリン別格」や「生茶」を手がけた。共通するのは原料や味へのこだわりと、品質だ。

 一線を画した新商品をどう生み出し、市場を切り開くか。佐藤社長の手腕に期待がかかる。
(文=嶋田歩)

日刊工業新聞2016年12月5日



縮小したエネルギーは伸び盛りの商品に向ける


 《商品企画部で缶コーヒーのFIREや緑茶飲料の生茶、ウーロン茶の聞茶の開発に携わった。商品の移り変わりの激しさ、ブランド育成の大切さを痛感している》

 「キリンビバレッジに戻ったのは7年ぶりだが隔世の感がある。セブン―イレブンのセブンプレミアム商品のように、コンビニエンスストアブランドが育ってきた。ナショナルブランド(NB)、コンビニのブランド、低価格プライベートブランド(PB)との競争で、存在感をどう出すか。キーワードは“おいしさ”だ。消費者に価値を認めてもらえる商品をつくる。キリングループの研究所機能も生かす」

 《紅茶飲料の午後の紅茶はトップブランドだが、他の商品は3位以下に甘んじている。紅茶に続くトップブランドを育てることが課題だ》

 「生茶や(ノンアルコールビールの)キリンフリーは、出足は好調でも競合商品の登場で勢いを失った。真摯(しんし)に反省する必要がある。勢いのある商品は素直に伸ばし、反応の悪い商品は縮小する、早めの判断が必要だ。縮小したエネルギーは伸び盛りの商品に向ける。幸い今はメッツコーラや世界のキッチンからなど、成長商品候補が育ちつつある」

 「自動販売機は台数の増加も必要だが、特定のカテゴリーで他社との連携やM&A(合併・買収)も一法だ。金額で相手と折り合えるかどうかだが積極的に検討したい」

 《趣味はゴルフと音楽、焼きもの収集。昨年亡くなった人間国宝の14代酒井田柿右衛門とも対話の機会を持った。良い品物を追求し、後継者を育てる姿勢に共感したという》
(文=嶋田歩)

日刊工業新聞2014年4月18日「新社長登場」


※内容は当時のもの
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
メディアでも注目のヒットメーカーとしてよく取り上げられた佐藤氏。ただ社長時代の2年間はあまり実績を残せなかった。マネジメントより現場の商品企画の方が性に合っているのか、キリンビバ社長では時間が足りなかったのか。あえて外部から招聘された湖池屋では最初から結果が問われる。

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