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4年連続賃上げ要請も多様な手法を

経団連が春闘指針原案
 経団連は2017年春闘へ向けた経営側の基本方針の原案をまとめた。4年連続の賃上げを会員企業に求めつつ、具体的な賃上げ方法についてはベースアップ(ベア)を含む多様な選択肢を例示。各企業の労使交渉に委ねる考えを示した。ただ経団連は賃上げだけでは経済の好循環は実現しないと判断。社会保障制度の先行きなど家計が抱く将来不安を払拭(ふっしょく)することが個人消費の喚起につながるとし、官民を挙げた取り組みの必要性に言及した。

 原案は5日に議論し、17年1月中旬に正式決定する。

 原案では、収益が拡大した企業は年収ベースの賃上げを前向きに検討するよう要望。16年春闘では前年を上回る年収ベースの賃上げについて「前向きで踏み込んだ検討」を求めたが、16年と同程度の賃上げ率を期待するか否かは引き続き検討する。年収ベースでの賃上げに際しては、自社の実情にあった手法を用いるよう求める。

 経団連が選択肢として示した賃上げ方法は(1)定期昇給や賃金カーブ維持分といった制度昇給(2)ベア(3)賞与・一時金増額(4)配偶者手当を含む諸手当の見直し−など。単年度での賃上げに加え、複数年度にわたる賃金制度の見直しや賃金以外の労働条件改善にも取り組むよう求めた。

 4年目を迎えた「官製春闘」は、政権が来春には原油高による物価上昇を見込めるとの理由から、期待物価上昇率を勘案した賃上げを求めている。これに対しては「物価動向は考慮要素の一つではあるが機械的に反映すべきでない」としている。
2016年12月1日総合4面
神崎明子
神崎明子 Kanzaki Akiko 東京支社 編集委員
確かに賃上げだけで経済の好循環が実現できないのはこの3年にわたる実情が証明しています。経済界からは「3年連続で2%を超える賃上げを実現していながら消費は上向いていない」との声が日増しに強まっています。

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