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経産省、中小企業の「稼ぐ力」実態調査へ。生き残りのヒント探る

最大30社程度、IBUKIや由紀精密など優良事例の研究も
 経済産業省は、地域の中小製造業の収益構造など、「稼ぐ力」の実態を把握するための聞き取り調査を12月中旬までに始める。ビジネスモデルを転換した企業から、量産部品加工などの事業を続けながら付加価値を創出している企業まで幅広く調査。需要低迷や受注単価の下落など厳しい環境下で、どのようにして収益性の確保に努めてきたかなどを調査結果として来春にまとめる。政策に反映するほか、全国の中小企業にも参考にしてもらう。

 調査は素形材センターに委託。新宅純二郎東京大学大学院教授らも協力する。来春までに最大30社程度の調査結果をまとめるが、その後も調査を続ける考えだ。

 経産省は10月に金型製造や鍛圧加工、鋳造などを対象とした「素形材産業を含めた製造基盤技術を活かした『稼ぐ力』研究会」(委員長=新宅教授)を設置。議論には、これまでにIBUKI(山形県河北町)や由紀精密(神奈川県茅ケ崎市)など自動車や航空機分野に新規参入して成長軌道に乗せた企業を招いた。現在も中小製造業の収益力向上についての事例研究を進めている。

 聞き取り調査では、自動車部品の量産など従来の事業形態で一定の収益を確保している企業を主な対象にする。その背景を分析することで中小企業の生き残り戦略を幅広く研究する。また事業転換を実現する上での課題なども聞き、中小企業にとって不足している経営資源が何かを把握する。
日刊工業新聞2016年12月2日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
インダストリー4.0のコンセプトが登場したことで、以前にも増して製造業を中心に比較されることが多くなった日本とドイツ。両国は中小製造業の裾野が広く、自動車産業などの競争力を支えている。だが、ドイツでは9割超の中小企業が黒字なのに対し、日本では多くの企業で収益が低迷。内閣府の調査によると2010年時点で、日独の中小企業の生産性には約2倍の開きがある。

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