東電改革の行方に気をもむ中部電力

火力発電事業の全面統合に踏み切るのか

 東京電力ホールディングス(HD)と燃料調達や火力発電分野で提携する中部電力が、さらなる提携拡大に慎重な姿勢になっている。政府内で議論している東電HDの経営改革問題の行方が、東電HDグループと中部電の共同出資会社にも影響しかねないためだ。両電力は既存の火力発電事業を統合するかを、2017年3月末までをめどに最終判断する。両電力が提携関係を深めるカギとなるのは、将来的に東電HDが自立的な経営を取り戻せるかどうかという点だ。

「JERA」の存在感


 「競争力を持つグローバル企業として成長させたい」。中部電力の勝野哲社長は22日の定例記者会見で、東電HDグループとの共同出資会社であるJERA(東京都中央区)の意義を改めて強調した。

 15年4月に設立されたJERAは、火力発電の燃料に使う液化天然ガス(LNG)や石炭の調達、火力発電所の建て替えや新設などを担う。LNGの年間調達量は約4000万トンと世界最大級。高い購買力を生かし、転売制限付きのLNGの新規調達を原則打ち切る方針を決めるなど、国際市場でも存在感が高まっている。

 東電HDと中部電はこれまで、段階的に火力関連部門をJERAに移管してきた。現段階で唯一残る課題が、既存火力の統合だ。両電力は17年3月末までをめどに既存火力の統合に向けて基本合意し、資産査定などの作業を本格化する予定。既存火力を統合すれば火力関連事業の全面統合となり、両電力の関係性はさらに深くなる。

全面統合には不安も


 しかし、中部電内にはJERAの設立当初から、火力の全面統合のリスクを指摘する声も根強い。東電HDは福島第一原子力発電所事故の損害賠償や除染、廃炉費用の上限が見えず、実質国有化されている。一方の中部電は、発電電力量全体の80%以上を火力に依存しており「火力発電の資産を完全に承継していいものか」(中部電関係者)との不安がつきまとう。

 東電HDの改革を議論する経済産業省の有識者会議「東京電力改革・1F問題委員会」は、これまでに4回開かれた。委員からは、JERAの利益を「配当などの形で福島の賠償に充てるべきだ」という意見も出ている。

 さらにはJERAを好例とし、原子力や送配電、電力小売りの分野でも他社との連携を含めた再編を検討している。想定よりも大幅に上振れすると予測される福島第一原発の廃炉費用などの捻出が必要なためだ。中部電が東電HDとの関係を深めれば、間接的に中部電も経営の自由度が狭まる可能性がある。

 JERAはもともと、燃料調達や火力発電の分野で両電力のスケールメリットを生かして収益を最大化し、双方の企業価値向上に貢献するという理念で出発した。中部電首脳は「純民間ベースで(火力統合を)進めるためには、東電が『国の会社』でなくなることが必要」と話す。16年内にまとまる予定の1F問題委員会の報告は、中部電との火力事業の方向性も左右する。
            

(文=名古屋・杉本要)

日刊工業新聞2016年11月30日付

杉本 要

杉本 要
12月01日
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国が東電の経営の方向性を前向きな形で示すことは極めて重要だろう。だからこそ経産省は東電改革の有識者会議で、東電と他社との事業提携を強く打ち出していると思う。一方で、他の電力会社からみれば、実質的に国有化されている企業と組むリスクを心配するのも当然。現在開かれている有識者会議の議論がまとまり、かつ東電の将来性を展望できるようにならない限り、中部電との既存火力統合は難しいのではないか。

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