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MUFGの起業家育成プログラム、早くも“芽吹き” 1期生が事業化にめど

正社員待遇で雇用し、創業に必要なノウハウ学ぶ
 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が2015年度末に始めた起業家育成プログラムが早くも芽吹こうとしている。現在、プログラムに参加中の1人が年明けにも事業化のめどが立った。有望な起業家候補を中長期に支援することで産業の活性化につなげられるか注目されそうだ。

20代から30代前半で理系


 起業家育成プログラム「M―EIR」は、20代から30代前半で理系の修士号を持つ若手研究者や、起業経験者らが対象。

 最長2年間、正社員待遇で雇用しながら、創業に必要なノウハウを学べるプログラムを提供する。ロボット、ライフサイエンス、情報通信など成長分野での起業志望者を想定する。現在、2期生を募っている。

ファイナンスの知識も自然と蓄積


 15年度は3月から1期生2人がプログラムに参加していた。2人のうち、化学分野を専門に手がける大学の準教授が事業化にめどを立てたという。三菱東京UFJ銀行の担当者は「(財務面などを補える)事業パートナーを見つけることができて、立ち上げに見通しが立ったようだ」と語る。

 ベンチャー企業は技術がありながらも資金調達で頓挫したり、事業計画が現実的でなかったりするケースが散見される。プログラムでは三菱UFJリサーチ&コンサルティングや三菱東京UFJ銀で企業の支援業務に直接触れることで、資金の集め方などファイナンスの知識も自然と蓄積されていく。

新規上場数に過熱感も


 政府は国内産業の新陳代謝を促す狙いから、ベンチャー企業の育成を重点課題に掲げる。足元の新興市場では06年前後以来の新規上場数で過熱感もある。三菱東京UFJ銀の担当者は「海外に比べればベンチャーを支援する仕組みはまだまだ整っていない」と語る。

 他の2メガバンクも成長産業分野でのベンチャー支援には積極的だが、背景には危機感がある。銀行としては早期からベンチャー企業を囲い込むことで中長期の取引につなげる狙いもあるが、国内産業が先細りすれば、自分たちの死活問題にもなる。果たしてブームに終わらない支援が続くのか。銀行の姿勢が問われている。

(文=栗下直也)
日刊工業新聞2016年11月30日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
業界では初めての取り組みとのこと。逆に、ファイナンスが得意な人物が技術に関する知見を深め、ベンチャーにジョインするというプログラムがあっても面白そうです。

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