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デジタル化で複雑な港湾業務をスマートにするロサンゼルス港の挑戦

GEのソフト活用し船のデータ、貨物、人を効率的に動かす
デジタル化で複雑な港湾業務をスマートにするロサンゼルス港の挑戦

ロサンゼルス港に停泊中の貨物船

 昨年のクリスマス翌日に入港した一隻の巨大コンテナ船が、ロサンゼルス港のデジタル化へのきっかけとなった。港に現れた「ベンジャミン・フランクリン号」は、船幅が高速道路14車線分、長さはアメリカン・フットボールのフィールド3つをつなげても間に合わないほどで、その深さは20階建ての建物にも相当する。これまで北米の港に寄港した船の中で最大級のメガ貨物船だ。

 そして、その中には冷蔵庫から子供靴に至るまでありとあらゆる商品が18,000個を超えるコンテナに詰め込まれており、その積み荷を降ろすだけでも3日半、という記録的な長時間を要した。

 入港に先立っては、数カ月にわたってロジスティクスの予行演習が行われ、トラックや貨車に貨物を積み込んで店舗や倉庫へ配送するのに必要な装置を揃えていたにもかかわらず、である。米国最大級のコンテナ港であるロサンゼルスの港湾ターミナルのオペレーターがプロセス改善の余地を痛感するには十分な事例だろう。

 「この巨大船舶の寄港経験は、私たちの能力の限界を試すと同時に、情報共有の効果を明らかにしてくれた」―。GEトランスポーテンションでカスタマー・パフォーマンス・アナリティクス事業担当エグゼクティブ・ディレクターを務めるジェニファー・シェプフェル氏はこう話す。

 「今回、情報共有が手作業で行われていたことを知って考えた。“もっとうまく、スピーディーに行うにはどうしたらよいのか”と。そして、そのプロセスのデジタル化を検討し始めた」(シェプフェル氏)

 その結果、ロサンゼルス市港湾局は2017年から、多様な種類の貨物輸送データを事前に可視化するGEのソフトウェアを使い始めることを決めた。

 「港湾情報ポータル(Port Information Portal)」と名付られけたパイロット・プロジェクトは、船荷主、港湾ターミナル・オペレーター、トラック、鉄道車両などから構成される複雑なシステム全体の中で、リソースを効率的に活用できるよう調整していくのに役立つ。


船の入港、2週間前にデータを入手


 プロジェクト参加企業は、まず一つのターミナルでこのシステムを2~3カ月にわたってテストし、その結果によって将来的には16のターミナル全てにシステムを拡大していく計画だ。

 GEトランスポーテーションのチーフ・デジタル・オフィサーであるセス・ボドナー氏は、港は巨大なレストランのようなものだと言う。「昔は、実際に来店するまでお客さんがどんな人なのかまったく分からなかった。港も同じで、入港の2~3日前までどんな荷物が降ろされてくるのか分からない」(ボドナー氏)

 船の入港まで2~3日もあれば十分と思うかもしれない。しかし、せっかくの情報も直前に届いたのでは、作業のボトルネックにつながる。GEの新しいソフトウェア・システムを使えば、港湾は、船の入港2週間前にデータを入手でき、港の資産をどう運用すべきか、関係者全員が余裕をもって入港する船のデータと連動させることができる。

 またそれぞれのカーゴの最終入港地もシステムを通じて分かるので、トラックや機械を使って最も効率的に貨物を動かす態勢を整えることが可能。この効果は膨大だ。ボドナー氏によれば、1カ所の港湾で効率性を1%高めることができれば、投資額を差し引いても6,000万ドルの節約になる計算になる。

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明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
とても興味深い取り組み。工場のスマート化より、はるかに波及効果がありそう。港湾はさまざまな利権がからむだけに、パラメーターの設定は難しいと思うが。

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