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中身よりも容器の方がすごい!?飲料を支えるニッポンの製缶・充填技術

キリンは国産最軽量のアルミ缶開発
中身よりも容器の方がすごい!?飲料を支えるニッポンの製缶・充填技術

日立造船の清酒向け充填システム

 キリン(東京都中野区、磯崎功典社長)は22日、同社のパッケージング技術研究所とユニバーサル製缶(東京都文京区)が共同で、ビール類向けに国産最軽量のアルミニウム缶を開発したと発表した。350ミリリットル缶は約5%、500ミリリットル缶は約7%軽量化した。11月下旬から、キリンビールの全国9工場のうち神戸工場(神戸市北区、写真)で導入を開始。他工場にも順次広げていく。

 軽量化は缶胴部分と缶蓋(ぶた)の強度を保ちつつ薄肉化し、巻き締め方も工夫し達成。350ミリリットル缶は現在の14・6グラムから13・8グラムへ、500ミリリットル缶は18・1グラムから16・8グラムへ軽量化。350ミリリットル缶で缶胴は10・9グラム、缶蓋は2・9グラムになった。

 キリンは容器軽量化で他社をリードしており、これまでもアルミ缶の缶蓋を縮径化したり、従来より重量が約2割減のビール中瓶を開発している。今回のアルミ缶を9工場全てに導入した場合、生産工程の二酸化炭素(CO2)排出量は年間約2万9600トン減らせる。神戸工場だけでも同4000トン規模の削減という。第三のビール「のどごし」や「一番搾り」ビール、発泡酒の「淡麗」などに順次、採用していく。

日刊工業新聞2016年11月23日



日立造船、清酒向け充填システム


 日立造船はガラス瓶とアルミ缶に対応可能な清酒向けの充填システムを製品化した。出羽桜酒造(山形県天童市)に11月に出荷する。瓶と缶の搬送や充填などを1台で兼用できるため、多品種生産の効率化につながる。

 クラフトビールや栄養ドリンク、健康食品での需要も見込んでおり、新機種投入により多品種生産対応の充填システム全体で年間7―8台の受注を目指す。

 製品化したシステムは同一レーンで瓶と缶の充填が可能なのが特徴。キャップ封止工程は缶のフタをかしめる装置を連結し瓶と缶の作業工程を別にすることで、缶への充填から封止まで一貫生産できる。

 瓶の封止装置の機構はキャップの種類に合わせて自動で切り替えられるようにし、交換時間を削減した。

日刊工業新聞2016年11月1日



国内最大手、澁谷工業の強みとは


 清涼飲料の無菌飲料充填機システムで国内最大手。主力のパッケージングプラント事業は飲料などのボトリングシステムのほか、酒類、薬品・化粧品向けも取り扱い、国内市場シェアは約60%を誇る。澁谷工業の強みはさまざまな液種に対応できる豊富な機種揃えにより、自社製品で一貫したボトリングシステムを構築できることにある。

 具体的には主要な機種に独創的な技術があり、多くの特許を所有していること。角容器、楕円(だえん)容器などの変形容器に対し兼用化技術があり、幅広い分野で豊富な納入実績があることである。実際、長年培った実績とノウハウを活かし、特許は国内外含めて約1700件を登録・出願している。

 このほか、炭素繊維の切断時間を半減させたレーザー応用システムや半導体分類検査装置(ハンドラー)などのメカトロシステム事業、野菜・果実類向け選果選別プラントの農業用設備事業も手がけている。

 近年は、人工透析システムやロボット培養システムなどを用いて再生医療向けiPS細胞(人工多能性幹細胞)の大量培養などを受託する再生医療の分野にも力を入れている。

 元々iPS細胞は、山口大学や京都大学などと共同で再生医療向け細胞培養技術を研究していた。今後はiPS細胞向けに細胞培養装置の製造だけでなく、培養自体の事業化を要請されているほどだ。

 特に山口大とは肝硬変治療の再生医療での臨床研究を行っている。また、患者の骨髄液を培養して骨髄間葉系幹細胞を増やし患者に点滴で戻す治療法で、澁谷工業はこの特許の独占的実施権を取得した。同社が窓口となり山口大以外の大学や病院にも広めていく。

 2016年6月期の連結業績は経常利益が従来の減益予想から一転して2割増益、2期ぶりに過去最高益を更新するほど好調だった。17年6月期も医療機器や農業用選果選別プラントの受注が好調に推移する中、コスト削減を徹底し増収増益の決算を目指す。
(文=清水秀和証券アナリスト兼IMSアセットマネジメント社長)

2016年11月10日「アナリスト千里眼」



日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
製缶メーカーはグローバルな再編に飲み込まれていますが、製品の信頼性や充填技術おいて日本メーカーは秀でており、素材から容器、充填する機械やノウハウまでを含めた総合力では海外に対抗できるのではないでしょうか。

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