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ライバルの子会社になったシロキ工業。生産技術を生かす時が来た

アイシンと急ピッチで融合。小型設備で海外の顧客広げる
ライバルの子会社になったシロキ工業。生産技術を生かす時が来た

シロキ工業のホームページより

 4月にアイシン精機の完全子会社となったシロキ工業。競争力強化を狙ったトヨタ自動車グループ内の事業再編に伴い、トヨタグループ向けを除いたシート骨格機構部品はアイシンからシロキに集約される。これまで必死に磨いてきた生産技術の真価が、再編のうねりの中で試されようとしている。

 その一つの事例が手のひらサイズの円盤状で、シートの背もたれを保持する高強度のリクライニングユニット「小径ラウンドリクライニング」の一貫生産ラインだ。「PSV(適地・適量生産ライン)プロジェクト」と名付け、熱処理とプレス加工、自動組み立てを一貫して手がける生産ラインを2013年に着手し、15年から名古屋工場(愛知県豊田市)で稼働させた。

 特に自動組み立て工程は「N分の1組み立てライン」と位置付け、設備投資と生産能力をそれぞれ4分の1、設置スペースを8分の1に抑えた。手塚威取締役常務執行役員は「大きく8項目の技術課題を一つひとつ詰めていった」と説明する。

 例えば、部品供給ではパーツフィーダーで従来のボウル式をやめ、省スペース化できるかき揚げ式のものを開発した。搬送工程では複数の手法を組み合わせていたが、ワークトランスファーに統一した。

 なぜシロキは小型組み立てラインを進めたのか。それは、小径ラウンドリクライニングで海外生産を見越してのこと。これまでは「精密プレスや特殊な熱処理をしているので海外でつくれず、大きなラインでメンテナンスも大変でコストも高かった」(手塚取締役)。これらの課題を解決するのがPSVプロジェクトだった。

 小径ラウンドリクライニングは名古屋工場で月間約150万個を生産しており、世界各地の工場に供給している。一貫生産できる小型ラインの完成で、国内に設置した設備をそのまま海外に運んで稼働しやすくなった。シート骨格機構部品で顧客を広げる使命を担うシロキにとって、大きな武器になる。
(文=名古屋・今村博之)
日刊工業新聞2016年11月21日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
シート骨格機構部品でライバル関係にあったアイシン精機とシロキ工業ですが、事業の移管で現在は融合を急ピッチで進めています。そもそもトヨタ自動車グループが取り組む事業再編は競争力強化が主眼。お互いのプライドを良い方向で生かしながら、少しでも多くの成功事例をつくってほしいです。 (日刊工業新聞名古屋支社・今村博之)

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