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地銀21行・グループは減益ラッシュ。新たな収益モデル模索へ

「新規の取引先がもうないと思っていても、まだ企業はある」(地銀協会長)
 地方銀行が日銀のマイナス金利政策による金利低下で苦しんでいる。2017年3月期連結業績予想の当期利益は減益が目立つ。低金利が本業の貸し出しの利息収入を圧迫する中、市況の悪化で投資信託や保険の販売による利益も減少している。収益増が見込みにくい中、経費削減を進めながら新たなビジネスモデルを確立できるかが今後の課題になる。

 全国地方銀行協会の中西勝則会長(静岡銀行頭取)は16日、会見を開き、加入行の地銀の4―9月期決算について「金利低下が厳しい。マイナス金利は物価上昇や景気回復を狙った政策ではあるが(地銀の経営は)厳しい状況」と語った。

 少子高齢化、地元企業の資金需要の乏しさに加えて、低金利が地銀経営に重くのしかかる構図は下期以降も続く。17年3月期は、当期利益で20%減を見込む。

 明るい兆しとしては融資先の業績回復で与信コストが下がり、全体の収益をわずかに押し上げているが、金融庁は貸出増を促しており、与信コストが上昇すれば経営が傾きかねない。

 中西会長は、「新規の取引先がもうないと思っていても、まだ企業はある。(新たな融資先を)探していくこと自体が我々の仕事かもしれない」と語った。

【東日本】収益多様化、さらに加速


 東日本の主要10行・グループの16年4−9月期は、めぶきフィナンシャルグループと東京TYフィナンシャルグループを除き、本業のもうけを示す実質業務純益で減益を余儀なくされた。

 貸出金期末残高は各行・グループとも増えたが、日銀のマイナス金利政策の影響で貸出金利息など資金運用収益が減少した。

 下期も低金利は続くとみられ、埼玉りそな銀行の池田一義社長は「資金利益の減少を覚悟して経営していく」と指摘。M&A(合併・買収)の仲介など、手数料収入の拡大で収益源の多様化をさらに進展させる。

 4月に横浜銀行と東日本銀行が経営統合して発足したコンコルディア・フィナンシャルグループの寺澤辰麿社長は「企業の事業性評価を行い対話をしながら、コンサルティング、融資、M&Aなどを行っている」とし、横浜銀の取り組みを東日本銀にも導入を進めることで、グループの企業価値向上を目指す。

 千葉銀行と武蔵野銀行は3月に経営独立性を維持した包括連携を結び、その効果も出始めている。「武蔵野銀行向けファンドやアセットマネジメント関連の効果が出ている」(佐久間英利千葉銀行頭取)、「提携効果は年3億円の計画に対し、上期で2億1000万円。さらに効果が出るようにしたい」(加藤喜久雄武蔵野銀行頭取)。地銀再編がとりざたされるなかで、各行の経営独立性を維持した業務提携が、今後はキーワードとなりそうだ。

 一方、米国大統領選挙の結果を受け、めぶきFGの寺門一義社長は「若干、ボラタイル(相場の値動き)が大きい。ただ徐々に落ち着きを取り戻すことを期待している」と述べた。


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日刊工業新聞2016年11月17日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
どのみち金融庁は地方金融機関の再編を目指していた。それがマイナス金利で早まっただけ。反グローバルリズムの流れの中で、ローカル経済の重要性さらに高まるはす。そこにしっかりビジネスを確立した地銀は生き残るし成長余地もある。

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