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LNG調達、転売を認めない売り手優位の状況は変わるか

東電・中部電の出資会社、仕向け地条項付LNGの新規調達打ち切り
LNG調達、転売を認めない売り手優位の状況は変わるか

昨年4月のJERAの設立会見

 東京電力グループと中部電力の共同出資会社であるJERA(東京都中央区、垣見祐二社長)は、転売を制限する仕向け地条項付の液化天然ガス(LNG)の新規調達を原則打ち切る。現状、中東からの調達を中心に長期契約の多くに設定されているとみられ、市場取引の流動性を欠くとの指摘がある。LNG調達規模で世界最大級のJERAの動きは仕向け地条項撤廃に向けて大きな前進となる。

 仕向け地条項とは貿易売買契約で貨物の送り先である仕向け地を制限し、買い手の第三国への転売を認めない。売り手優位の条項だとして、日本は欧州や韓国、中国、インドなど大口需要国と連携し、緩和を呼びかけている。

 JERAは燃料調達規模の拡大により交渉力が増しており、仕向け地条項付きの長期取引を原則止める方針だ。同条項をめぐり、公正取引委員会も調査に乗り出しているとみられ、独占禁止法に当たると判断する可能性もある。

 LNG需要は2020年までに約45%拡大する見込みで、マレーシアやインドネシアなど輸出国が自国の経済成長で輸入国に転じる動きもある。一方、市場取引指向の北米や豪州、アフリカからのLNG輸出が増える見通しで、従来の中東や東南アジア主体の構造が変わり始める。

 日本の電力、ガス会社のLNG調達量は全体で世界の約3分の1を占める。最大輸入国の立場を生かし、経産省は「LNG産消会議」など国際会議の場を通じて仕向け地条項撤廃や安定性・透明性の高い価格指標の設定などを呼びかけるとともに、国内のインフラ整備を加速する。

日刊工業新聞2016年11月18日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
JERAは東電の経営改革問題と密接に関係してくる。経産省は東電の経営改革でJERAモデルを参考に、燃料調達以外の送配電や販売部門でも外部と連携させる構想を持っているようだ。JERAでいえば、次の課題は既存の火力発電事業の統合。火力発電は中部電の発電の約8割を占め、東電との一体化が進めることになれば、廃炉負担をどうするかは避けて通れない。

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