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“トイレ先進国”日本の簡易トイレが新興国を救う日は来るか

簡易式トイレ「SaTo(サトー)」広がる
“トイレ先進国”日本の簡易トイレが新興国を救う日は来るか

新興国向け簡易トイレ「SaTo」の洋風タイプを新たに開発した

 LIXILは新興国向けに、簡易式トイレの事業化を加速する。専門部署「SocialToilet(ソーシャルトイレット)部」を新設。開発機能や知的財産権(IP)を集中させた。国や地域の実情に合うよう製品の品ぞろえを拡充する一方、節水や排せつ物の肥料化によって生まれる経済的価値を訴求しトイレの普及につなげる。LIXILは2020年までに、世界で1億人の衛生環境を向上する目標を掲げる。目標達成に向け、持続可能な事業モデルの確立を急ぐ。

ビジネスとして初めて継続的な社会貢献


 LIXILは新興国向けの樹脂製簡易式トイレ「SaTo(サトー)」で、洋風タイプを新たに開発した。17年度内にアフリカで発売する予定。価格は15ドル程度になる見込み。現在は実証実験中で、高齢者や身体障がい者から使いやすいと評価されている。

 SaToは排水口に取り付けた開閉式の弁が特徴。地場の企業でも量産できる簡単な構造ながら、排せつ物の悪臭や病原菌を媒介する虫の侵入を防げる。これまでアジア・アフリカ地域を中心に、世界14カ国以上で累計100万台以上が使われている。

 ただし、実際に販売しているのは3カ国程度にとどまっていた。今後は採算性を考慮した価格設定で販売を拡大する。同社は、ボランティアではなく、ビジネスとして持続可能な形にして初めて「継続的な社会貢献が可能になる」(富田健介常務役員SocialToilet部部長)と見ている。

配管からの漏水や“盗水”が後絶たず


 一方、洗浄水量1リットルの超節水型トイレ「マイクロフラッシュトイレシステム」は、ケニアの都市部で実証実験を進めている。本体の開発はほぼ終えた。17年度をめどにビジネスモデルを固め、商用化の道筋を付ける。

 ケニアの都市部では水資源の不足に加えて、配管からの漏水や“盗水”が後を絶たず、家庭への水の供給は滞りがちだという。専門業者から水を購入することもしばしばで、使われているトイレも洗浄水量が10リットル超のタイプが主流。水の節約による金銭的価値を訴求することで、普及を狙う。

肥料をバラ生産に活用


 ふん尿から肥料や土壌改良剤を生み出せる「グリーントイレシステム」の実証実験も進めている。食糧生産に使用するのは心理的に抵抗があるため、現在は輸出用のバラを生産する農家の協力も得ながら「コミュニティー単位で自己完結できるシステム」(同)を目指す。

 LIXILグループが英国の調査機関に依頼してまとめた調査によると、劣悪な衛生環境が世界経済に与えた経済的な損失は2229億ドル(約24兆円)にのぼる。感染症による死亡や病気といった人的損失に加え、医療費の増大や女性への性暴力にもつながっているという。

 「日本は江戸時代から、くみ取り式トイレで無駄のないサイクルを成立させてきた“トイレ先進国”」(同)。LIXILは歴史的な文化や開発力を、新興国の事業展開に生かす考えだ。
(文=斎藤正人)
日刊工業新聞2016年11月16日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
トイレが整備されていないことがさまざまな問題を生んでいる新興国。ビジネスとして成り立つにはトイレの必要性をまず普及しなければいけませんが、そのためにはトイレの設置数を増やす必要があり、ボランティアになってしまう、というジレンマが起こりそうです。

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