ライザップ、 M&Aも「結果にコミット」

美容・健康を軸に周辺領域へ拡大

 マンツーマンのトレーニングジム「RIZAP」(ライザップ)を運営するRIZAPグループ。もともとは健康食品の通信販売会社としてスタートしたが、「結果にコミットする」というCMで一躍有名になり、美容・健康事業が急成長している。現在では高い知名度を背景に広告宣伝費をかけずとも会員が集まる好循環が生まれている。RIZAPで稼いだ資金を原資に積極的なM&Aにも取り組んでおり、時価総額は1000億円を突破した。「自己投資産業ナンバーワン」をめざすRIZAPの躍進の背景を分析した。

絶大なブランド力、高収益率が加速


 RIZAPグループは、健康食品の通信販売を目的に2003年に設立され、現在は美容・健康関連事業、アパレル事業、住関連ライフスタイル事業、エンターテイメント事業を営んでいる。

 美容・健康関連事業は、『結果にコミットする』というCMで一躍有名となった「RIZAP」により予想を大きく上回る成長を見せている。その源泉は、他のフィットネスジムに比べ高収益率を誇り、その資金力を元に積極的に広告宣伝を行うことで新規の顧客を大幅に増加させてきたことにある。

 広告宣伝効果により「RIZAP」ブランドの認知度が高まったことや利用者の満足度が高いこともあり、2014年頃から多額の広告宣伝費を投入せずともリピート客(例えば2か月コースから1年コースへの変更)や既存顧客からの紹介による新規顧客が増加している。売上高に占める広告宣伝費の割合が低下したことにより、高収益率を更に加速させている。


 なお、認知度の高い「RIZAP」ブランドを活用するため、2016年7月、持株会社であった健康コーポレーションの美容・健康事業を新設分割した上で社名を「RIZAPグループ」に変更している(新設分割した会社の社名は「健康コーポレーション」)。

 時価総額が1,000億円を超え、海外店舗も増加させ業績絶好調のRIZAPの経営目標は「自己投資産業グローバルNo.1ブランドをつくる」ことである。自己管理に対する意識が高い顧客をターゲットに、美容・健康、アパレル、ライフスタイル、エンターテイメントなどの分野において多面的なサービス展開により更に業容の大幅な成長を見込んでいる。

 RIZAPでは、対象とする顧客のニーズを徹底的に分析した上で新規事業を立ち上げている。RIZAPの子会社が運営する「RIZAP GOLF」や「RIZAP ENGLISH」はいずれも問い合わせが殺到し3ヵ月以上の待ち状態が続いているとのことで、まさに顧客のニーズを的確に捉えた事業展開を行っているといえる。

株主構成、 高い創業オーナー比率



 RIZAPを創業した瀬戸健社長は1978年生まれ。2002年から個人事業としてパソコン販売を始めた。2003年に資本金900万円で健康コーポレーションを設立した。設立からわずか3年後の2006年に札幌証券取引所アンビシャス市場に株式を上場。M&Aにも積極的で多くのグループ会社の役員も兼任する。

 現在38歳と若い。経営陣に助言する経営諮問委員に、元経済財政担当大臣の竹中平蔵氏やシティグループ証券前副会長の藤田勉氏、一橋大学大学院特任教授の伊藤邦雄氏ら大物を招き、コーポレートガバナンスを強化している。

 RIZAPの筆頭株主は瀬戸健社長が代表取締役を務める資産管理会社のCBM。第2位が瀬戸健社長本人で、第3位は瀬戸早苗氏(2016年6月の株主総会で健康コーポレーション取締役を退任)。3者を合計すると7割近くに達する。上場してもなお、創業オーナー社長が高い持ち株比率を維持していることから、トップダウンによる意思決定の速さがRIZAPの急成長の一因になっているとみられる。

上場企業株、割安に取得


 RIZAPは美容・健康事業を軸に考えており、M&Aについても美容・健康事業の拡大、または美容・健康事業とのシナジーをテーマにM&Aを実施してきた。M&Aにより美容・健康事業を拡大させる一方で、美容・健康事業とのシナジーが見込めない会社については積極的に株式譲渡をしている。2007年に3社、2008年に3社、2013年9月に1社、2015年5月に1社の株式を外部に譲渡した(下表の青色部分参照)。


 RIZAPのM&Aは、基本的には株式買収金額が比較的小さいことが特徴である。しかし2016年に入り10億円を超えるM&Aを4件実行しており、年々大型化しているのは注目すべきである(表の橙色部分参照)。

 株式買収金額が最も大きかったのは2007年に子会社化した弘乳舎(36億円で買収)であるが、2013年にアスラポート・ダイニングに株式全てを25億円で売却している。買収金額が多額になる見込の会社の株式は100%取得せず経営権を支配できる50%超を取得するにとどめているケースが多い。

 また、上場会社の株式は時価を大きく下回る価格で買収している。2014年1月のゲオディノス(売上8,370百万円)をTOBにより子会社化した際の1株あたり純資産が556円に対し公開買付価格は178円である。2015年2月の夢展望(2013年東証マザーズに上場)の買収もその典型である。

 アパレル業界全体の業績が低迷しており、アパレル商材を扱う同社の業績も悪化していたが、2012年に同社が金融機関と締結したシンジケートローンのコベナンツ(財務制限条項)に記載されている「2期連続経常損失を計上した場合に借入を一括返済する」ことが現実化したことで同社の資金繰りが悪化した。

 同社の資金援助に唯一手を挙げたRIZAPが相当有利な第三者割当増資により同社を子会社化するという結果となった。なお、その後、RIZAPが親会社になるという期待から同社の株価が急伸、その結果、同社の株主全体に大きな利益をもたらしている。

 M&Aを推し進める一方で、新たな収益基盤を創造するため、下表のように産学提携、共同研究や各分野のリーダー企業との提携も進めている。今後はM&Aだけでなく業務提携も増加することが予想される。


<次のページ、M&Aさらに積極化の公算。買収子会社の成長が重要に>

M&A Online編集部2016年11月10日

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石塚 辰八

石塚 辰八
11月16日
この記事のファシリテーター

今でこそ有名になったRIZAPですが、そのM&Aの歴史を振り返ると、設立間もないうちから驚くべき件数を実施していることがわかります。新規事業もM&Aも、多くの試行錯誤のなかからヒットする事業がうまれてくる。自己投資産業で世界一をめざすRIZAPの挑戦に今後も注目したいと思います。

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