リーディング産業に変化の兆し、神戸産業界の復権なるか

神戸商工会議所会頭にシスメックスの家次会長兼社長

 神戸の産業界に新しい風が吹こうとしている。国内で3番目に設立された伝統ある神戸商工会議所の第31代会頭に、検体検査機器・試薬で高シェアを持つシスメックスの家次恒会長兼社長が就任した。

 過去50年にわたり、会頭職は地元大手の代表格である神戸製鋼所と川崎重工業、銀行出身者が占めていた。医療機器業界の新会頭は重厚長大からの変革を模索する神戸経済の象徴だ。

 「医療産業都市を目指す神戸にはこの上ない指導者」(神戸経済同友会の高士薫代表幹事)、「慣例にとらわれずにざん新な発想で会議所を運営してほしい」(兵庫工業会の大西功一会長)。新会頭には他団体トップも期待を寄せる。

 家次さんは町工場的な会社だったシスメックスを兵庫県内の時価総額首位(約1兆5000億円)の企業に育てた。もちろん会社経営と会議所の運営は違う。人口が減少し、製造業の雇用力が低下する神戸の活性化は難しい課題だ。

 「いつの時代も港を起点に新しいものを取り入れ、新産業が生まれてきた」―。神戸が持つ国際性、ベンチャー精神、チャレンジ精神こそ発展の源と家次さんは語る。中小企業も巻き込みつつ新産業を育成できるかどうかが、神戸経済浮上のカギとなる。

日刊工業新聞2016年11月10日



医療産業都市の発信力


  伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)に関連した閣僚会合のうち、神戸市では主要7カ国(G7)保健相会合が開かれた。これを一過性のイベントで終わらせないために、医療産業都市・地域としての発信力を強めていく必要がある。

 神戸は1995年の阪神・淡路大震災からの復興や、人工島ポートアイランドで展開する国内最大級のバイオメディカルクラスター「神戸医療産業都市」の取り組みが高く評価され、開催地に選ばれた。

 9月11、12日の会合では各国の閣僚がエボラ出血熱、ジカ熱などへの対応や、抗生物質が効かなくなる薬剤耐性対策、誰でも負担可能な費用で医療や保健サービスを受けられる仕組みづくりを議論。成果を盛り込んだ「神戸宣言」を採択した。

 さらに閣僚らはiPS細胞(人工多能性幹細胞)の臨床応用を手がける研究拠点やスーパーコンピューター「京」も視察。一般向けにも「ひょうごKOBE医療健康フェア」などの関連イベントを開くなど、医療産業都市としての神戸の魅力を内外にアピールした。

 神戸市の久元喜造市長は「神戸宣言」を踏まえて、市独自の取り組みを発表。世界保健機関(WHO)の神戸センターや神戸大学などが進める認知症の早期発見・早期介入を目指すプロジェクトに協力し、高齢者のデータを提供する。また新たな認知症の事故救済制度を検討する。

 さらにITを活用して感染症の管理体制を強化。保健師や感染症の訪問指導員にタブレット端末を持たせ、感染症の発生場所のトイレや台所などを撮影して画像を送り、関係機関や医師とやりとりしながら対応する仕組みを構築する。

 兵庫県の井戸敏三知事も「これからも全国に先駆けた取り組みを進める」とコメントし、講演会やシンポジウムを通じて次代を担う人材の育成に挑む。

 サミットのようなイベントは一時的な盛り上がりで終わりがちだ。地域の特性を発揮していくためには会合の閉幕後、独自の取り組みをどれだけ続けられるかが重要になる。

日刊工業新聞2016年9月30日




尾本 憲由

尾本 憲由
11月12日
この記事のファシリテーター

震災前からの課題であったが、なんだかんだと重厚長大型から抜けきれなかったのが神戸市の産業。いまや人口でも福岡市に抜かれてしまった。医療産業都市構想はそんな沈滞状況を払拭できるのか。今回の財界人事が示すように、実際の産業構造にも変化が見え始めている。かつて都市経営の優等生だったころの勢いをもう一度取り戻してほしい。

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