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ホンダ、北米のSUV生産再編。“ピークを超えた市場”で柔軟に動く

「CR―V」をメキシコからインディアナ工場に移管
 【コロンバス(米オハイオ州)=池田勝敏】ホンダはメキシコで生産している北米向け主力スポーツ多目的車(SUV)「CR―V」を、2017年初に米国生産に移管する。移管に伴ってメキシコで空いた能力で小型SUV「HR―V」の生産を始める。同時期に高級ブランド「アキュラ」のSUVの生産も現在の1工場から2工場体制にする。ガソリン安を受けて米国ではSUVを含む「小型トラック」市場の活況が続く。旺盛なSUV需要に応じて、増産できる体制を整える。

 CR―Vを全面改良し年内に発売するのを機に、メキシコのグアダラハラ工場から米インディアナ工場に移管する。インディアナ工場の年産能力は25万台。インディアナ工場では主力セダン「シビック」のみを生産しているが、能力をCR―Vにも活用する。グアダラハラ工場の年産能力は6万台で、移管前より生産を増やしやすくする。次期CR―Vは、米イーストリバティ工場とカナダのオンタリオ工場でも生産する計画で、計三つの工場で作る。

 CR―Vの移管に伴い、グアダラハラ工場ではHR―Vの生産を始める。HR―Vは北米ではメキシコのセラヤ工場でのみ生産でしているが、供給できる工場を二つに増やす。アキュラのSUV「MDX」も現在米アラバマ工場でのみ生産しているが、17年初めにイーストリバティ工場でも生産を始める。

 米国市場全体に占める小型トラックの比率は14年、15年暦年がそれぞれ52%、56%となった。最近は単月で60%を超えており、16年1―10月累計では59%と拡大が続く。

 一方でホンダ車の16年1―10月累計の小型トラックの比率は49%で、市場の需要動向より低い水準にとどまる。「ホンダ車もSUVの需要が強いが、生産で頭打ちになっている」(神子柴寿昭専務執行役員)といい、供給能力が限られているのが課題だ。需要の増大に応じてSUV車種の生産場所を再編、供給しやすい体制を整える。
池田勝敏
池田勝敏 Ikeda Toshikatsu 編集局経済部 編集委員
リーマン・ショック以降、15年まで堅調に拡大してきた米国市場だが「ピークを超えた」(車幹部)との見方が多く、費用がかさむ新工場の建設など生産能力を上げる投資には踏み切りにくい情勢だ。さらにトランプ大統領の誕生は日系の自動車メーカーにとって逆風になる可能性もある。9日にはGMが、小型トラックへの需要シフトを受けて米2工場の3交替制勤務を止めて稼働を下げると発表。ホンダは全体の能力を上げずに小型トラックの比率をできるだけ増やす方針だ。

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