「単純に規模を大きくするM&Aはやらせない」(三菱ケミカルHD社長)

越智仁社長に聞く化学系3社統合の次

 ―2017年4月の化学系3社統合の主な狙いは何ですか。
 「成長するために必要な統合だ。グローバルで見ると、マーケティングや販売チャンネルの相互利用が不十分で、海外での事業拡大が十分にできない。事業ごとで顧客のモデルチェンジなどの情報量が極端に違う。情報量を共有しないと成長戦略がうまく回らない。もう一つは資本の効率化だ。研究開発費や固定費を含めて1社では重たい。あとは人材だ。情報を持つ人同士が付き合うので、人材が育成・強化され、有能な人材を互いに活用できるようになる」

 ―統合新社の各事業部門が25年度までの成長戦略を立案中です。
 「20年度までの現中期経営計画は今の既存事業をベースに大きな変更のない戦略を立てている。ただ、10年後となれば、知恵を絞らないといけない。同じ製品・事業が全て続いているはずがなく、自動車やスマートフォン、液晶パネルの形態も変わるだろう。今からやるべきことを把握して、スピード感を持って取り組む。自力成長だけで20年近くに来て、何となく危ないと感じても遅い」

 ―成長をけん引する有望事業は何ですか。
 「基盤事業の石油化学、MMA(メタクリル酸メチル)、産業用ガスは大きく変化せず、成長よりも安定的にキャッシュを生み出す役割だ。機能商品群やヘルスケアで成長していくことが大事だ」

 ―グループ再編のスピードが遅いとの厳しい指摘もあります。
 「三菱化学の問題を解決しないといけなかった。ナフサクラッカー再編、塩化ビニルやスチレンモノマー撤退はやはりコストが発生するから簡単にはいかない。テレフタル酸も最後まで時間がかかった。あれだけの損失が発生するし、それを『手緩い』と言われても他にやりようがない。(三菱化学社長の)石塚さんはしっかりやられたと思う」

 ―今後のM&A(合併・買収)戦略は。
 「単純に規模を大きくするM&Aはやらせない。『市場のここを攻めたい。だからこの技術を買いたい』ならOKだ。機能商品群で基点となる技術や販売チャンネルはM&Aで獲得する。一方、ヘルスケア、特に医薬は違う世界で、規模とシーズを両方手に入れる方向があり、ガスも同様だ」
(聞き手=鈴木岳志)

日刊工業新聞2016年11月7日「挑戦する企業・三菱ケミカルHD編」より

米山 昌宏

米山 昌宏
11月08日
この記事のファシリテーター

越智社長のコメントに、「単純に規模を大きくするM&Aはやらせない。『市場のここを攻めたい。だからこの技術を買いたい』ならOKだ。」というのがあります。
通常のM&A では、シナジーが無ければ、1+1=2となるので、売主が求めるプレミアムの分だけ買主が受け取る価値は下がるはずです。
規模拡大は通常は買主のビジネスの価値を高めません。時間を買うためにM&Aも買主のビジネスの価値を高める一つの方法だと思います。販路チャンネルの確保などがそれにあたります。いづれにしていも、1+1が2以上となるようにM&Aを実施することが必要だと思います。

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