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タカトリが有機EL製造装置に参入。偏光板と貼り合わせ

スマホ用パネルはフレキシブル化進む
タカトリが有機EL製造装置に参入。偏光板と貼り合わせ

上段はiPhone7をプレゼンするクックCEOと、下段は有機ELを採用したサムスンのスマホ

 タカトリは2017年に有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)ディスプレーの製造装置事業に参入する。同社は液晶や半導体の切断や貼り合わせ装置が主力。スマートフォン向けで有機ELディスプレーの需要拡大が見込まれると判断。同分野の製造装置へ足場を拡大し、受注機会を増やしていく。すでに貼り合わせ装置の試作機を製作した。17年4―6月期をめどに販売をはじめ、国内のほか中国市場を開拓する。

 偏光板と有機ELなどの貼り合わせ装置の試作をこのほど完了した。有機ELは高価なため、1回で材料を貼り合わせる必要がある。そのため、偏光板の保護フィルムをはがす前後などに洗浄する機能を付加。フィルムを貼る位置決めも、高い精度で行うガイドを採用するなどの工夫を施した。貼り合わせ精度はプラスマイナス15マイクロメートル(マイクロは100万分の1)を目指しており、さらなる品質向上を目指している。

 タカトリは液晶ディスプレー向けフィルム接着装置などを手がけスマートフォン向けに関連装置を供給していた。有機EL分野でもこれまでのデバイス分野で培ってきた知見を生かしていく方針。貼り合わせ精度のほかディスプレーの狭額縁化に対応した技術開発も進めていくという。

 有機ELディスプレーは韓国サムスン電子が先行し、米アップルが2017年発売のスマホで採用する見通し。液晶からの置き換えが進むとみられる。
(東大阪支局)

日刊工業新聞2016年11月7日



住友化学、統合部材を供給へ


 住友化学は2017年までに、スマートフォンの表示装置に使う有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)パネルを数十万回折り畳める統合部材の供給を始める。スマホの販売台数は頭打ちになるが、液晶に比べて薄く高精細な有機ELパネルの需要は年3割伸びる見通し。韓国の電機大手が年内にも発売する有機ELパネルの真ん中で二つに折り畳める次世代スマホ向けの需要を取り込む。

 統合部材は1枚のフィルム上にタッチセンサーと偏光板、ウインドーフィルムの機能を付与する。保護ガラスの代替となるウインドーフィルムにタッチセンサーをパターニングして偏光板をコーティングする見込み。

 これにより折り曲げ強度が増し、外側・内側双方に数十万回以上折り畳める有機ELパネルの作成が可能。厚さも3部材を個別に貼り合わせた場合に比べて半分以下になり、折り畳んでも薄いスマホが生産できる。

 従来の有機ELパネルはタッチセンサーパネル、偏光板、保護ガラスなど複数のガラス製部材を使い、折り曲げができない。

 このため、住友化学はガラス部材をフィルム製にして折り曲げ可能にしたフレキシブル部材の開発に乗り出し、両側面が曲線状の表示パネルを持つスマホにフィルム型タッチセンサーが採用された。

 液晶塗布型偏光板、ウインドーフィルムという折り曲げ可能なフレキシブル部材も開発し、スマホ大手が採用に向けた評価を続けている。こうしたフレキシブル3部材の研究成果を生かし、統合部材の開発を進める。

 調査会社の矢野経済研究所によると、世界のスマホ出荷台数は20年に17億8248万台(15年見込み比23・4%増)となるが徐々に頭打ちになる見通し。

 ただ、米アップルが18年発売のスマホ「iPhone(アイフォーン)」に採用する意向を示すなど、スマホ用ディスプレーで有機ELが普及する見込み。米調査会社のIHSテクノロジーによると、20年のスマホ用有機ELディスプレー市場は15年比93%増の6億8360万枚に増える見通し。

日刊工業新聞2016年3月23日



明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
キヤノントッキやアルバックなど蒸着機は品薄が続いていた有機ELの製造装置。ディスプレーが次世代への進化する中で、部材や装置の競争環境も変わる。有機ELのサプライチェーンで果たしてどこが儲かる構図になるのか。

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