オバマの特別顧問も務めたウーバー幹部が見据えるライドシェアの先

プロフ取締役「ウーバーを使うのは第一段階。今後、都市の大変革が起きる」

 空き部屋を旅行客に貸し出す米エアビーアンドビー(サンフランシスコ)と並び、モノやサービスを所有せずに共有するシェアリングエコノミーの代表格として注目されるのが、米ウーバー(同)でしょう。スマートフォンアプリで近くにいる車を呼び出す配車サービスだけでなく、ウーバーが認定したドライバーの自家用車を乗客とマッチングさせるライドシェア(相乗り)で大きく成長し、この分野の最大手。創業は2009年と最近ながら、世界中に60万人もの契約ドライバーを抱え、株式時価総額は6兆円を超えるとも言われています。

 ただ、既存のタクシー会社の経営を圧迫しタクシー運転手の職を奪うとして、各国の政府やタクシー会社から訴えられるケースが頻発しています。日本でも一般人が自家用車を使って許可を得ずに有料送迎するのは道路運送法で禁じられているため、ウーバーのライドシェアである「ウーバーX」は一部地域での試行レベルにとどまり、スマホアプリを使ってウーバー専用のタクシーを呼ぶ「ウーバーブラック」や一般タクシーの配車サービスを展開しているにすぎません。

「東京は最後の大都市」


 「東京はライドシェアを導入する世界で最後の大都市になるかもしれない」。世界のトレンドとはかけ離れ、ライドシェアの導入が遅々として進まない日本の状況から、11月2日に在日米国商工会議所主催の会合で講演したウーバーのデイビッド・プロフ取締役チーフアドバイザーは、こう苦笑いしながらも、「五輪での顧客運送手段として補完的な役割を果たせる」と話し、2020年の東京五輪・パラリンピックまでの本格導入に期待を表明しました。

 同氏によれば、今年夏のリオデジャネイロ五輪の期間中、全交通手段に対するウーバーの利用率は通常の5%から15%に跳ね上がったということです。

 「配車依頼から平均6分で車が到着する」(プロフ氏)という手軽なライドシェアは、自家用車の代替となるだけでなく、途上国や過疎地および公共交通が整備されていない地域の交通アクセスの改善、低所得者の収入手段、環境負荷の低減、交通渋滞の緩和、都市部での駐車スペースの削減、乗客の安全性向上につながると同氏はいいます。

 とはいえ、日本でライドシェアが広がらないのは、法規制だけでなく、ほかの国と違ってタクシーが安全な乗り物で、ぼったくりや運転手による暴行のような事例があまりないことが挙げられます。

 それでも、シェアリングエコノミーの大潮流が日本に押し寄せてくるのは間違いないでしょう。エアビーアンドビーがきっかけとなり物議を醸した民泊も、訪日客の増加に伴うホテル不足と来るべき東京五輪での宿泊対応を背景に、東京都大田区や大阪府の35市町村、北九州市など国家戦略特区で認められ、宿泊日数の要件も緩和の運びとなっています。

 かたやライドシェアでも、2015年10月に安倍首相が「過疎地などで観光客の交通手段として自家用車の活用を拡大する」として、国家戦略特区を対象に規制緩和を検討するよう指示しています。

「政治で自分ができることはもはや限られている」


 来日したプロフ氏は、かつてオバマ大統領の選挙参謀で大統領選を勝利に導いた立役者としても知られ、大統領特別顧問も務めていました。

 2014年9月に政策・戦略担当上級副社長としてウーバーに入社しましたが、その理由は「政治を通して自分ができることはもはや限られている、政治のキャリアは終わりだと思い、何か新しいことをやろうとしていた」ところ、出身地のシカゴで、ウーバーが貧困地域に雇用と収入源を生み出し、交通アクセスの大幅改善に役立っているのを目の当たりにし、「チャレンジしがいがあると、魅力に感じた」といいます。

 さらに「ウーバーはサービスを開始して6年で(行き先の違う他人をマッチングして相乗りさせる)カープールにまで発展した。次の6年はさらに大きな変革が待っている。ウーバーを使うのは第一段階で、今後、都市の大変革が起きる」と、ライドシェアを超えた将来像も見据えています。
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(文=藤元正)

日刊工業新聞2016年11月7日

藤元 正

藤元 正
11月07日
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同社ではピッツバーグで自動運転車の開発を進め、ゆくゆくは完全自動運転車によるカープールも想定していますが、どうやら彼の頭の奥には、社会変革と21世紀型の新しい都市づくりがあるようです。オバマ大統領の特別顧問だった人物だけにビジョンは大きい。ライドシェアで日本があたふたしている間に、向こうはさらに先に行ってしまいそうです。

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