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自動車用触媒で世界トップ3へ。トヨタグループの隠れた実力企業とは

キャタラー、新しい研究開発拠点を起点に技術と人材育てる
自動車用触媒で世界トップ3へ。トヨタグループの隠れた実力企業とは

展示会で技術力をアピールするキャタラー

 キャタラーは2025年に自動車用触媒を世界で年産3500万個にする長期ビジョン「グローバルビジョン2025」を策定した。主要取引先であるトヨタ自動車グループ以外への拡販や供給地域の拡大、次世代事業の創出、人材育成などを成長戦略に掲げる。

 同社は国内首位、世界4位の自動車用触媒メーカー。17年には静岡県磐田市に新研究開発拠点「キャタラーARKクリエーションセンター」も設立し、世界のトップ3入りを狙う。

 「これまで他社販売に熱心に取り組んできたとはいえない」と、砂川博明社長は打ち明ける。現在はトヨタグループ向けが売上高全体の約7割。触媒という製品の特殊性もあり、トヨタ向けの仕事を着実にこなせば順調に成長できた。

 しかし、リーマン・ショックや東日本大震災を経験し「大きな環境変化にどう対応するかがビジョンのテーマとなった」(砂川社長)という。現在は米ゼネラル・モーターズや独フォルクスワーゲンとの取引が拡大。「品質への評価は高い。新規取引先からの引き合いもある」(同)と自信を深めている。

 新興市場開拓も急ピッチだ。インドで新工場が稼働し、現地2輪車メーカーへの供給が始まった。南アフリカ共和国の生産拠点は、欧州への供給基地として能力増強を計画する。さらに北米での受注増に対応するための増産準備も進める。

 経営基盤の強化に取り組み、15年には触媒メーカー初となるデミング賞を受賞。新研究開発拠点は技術者が交流しやすい環境を整え、自動車メーカーと一体となった研究開発を加速させる。次世代技術ではトヨタが世界で初めて市販化した燃料電池自動車(FCV)「MIRAI」にFCV用電極触媒が採用された。

 世界的に環境規制が厳しくなる中、触媒メーカーが果たす役割はますます大きくなる。グローバルビジョンをスタートさせた16年度は「“人財”育成」が重点テーマ。将来の大きな飛躍のため、内部固めに注力する。
(文=浜松・田中弥生)
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
トヨタグループ向けに安定供給し成長してきたが、最近はGMやVWからも技術力を評価され、受注が拡大している。FCV向け触媒の開発で世界に先行したが、これから競争激化は必至。新開発センターが狙い通り機能し、顧客基盤が広がれば世界トップ3入りが見えてくる。

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